プロ1年目でブレークした阪神高山俊外野手(23)がカミナリを落とされた。4日の紅白戦でバント失敗の際に、一塁への走塁を怠った。「ずっと立っとけ、アホ!」。中村豊外野守備走塁コーチ(43)が即座に叱責(しっせき)。さらなる飛躍が求められる来季に向け、愛のムチが飛んだ。

 その瞬間、安芸の空気が一変した。紅白戦の4回表無死一、二塁。高山がバントを試みたが、打ち上げてしまった。三塁線手前のファウルゾーンで捕手が小飛球をキャッチ。立ち止まったまま打球を見届けた。肩を落としベンチに戻るルーキーに強烈な言葉が飛んだ。「ずっと立っとけ、アホ!」。声の主は中村コーチ。明大の先輩で鬼軍曹的な存在だ。新人王有力候補にも容赦なく激しく責めた。

 問題視したのは一塁に走らなかったことだ。「普通のことでしょう。シンプルにダメなことはダメ。疲れているのは分かっているが、全力疾走を怠らないんは、ずっと言っていること。怒られないと年を取ってから苦労しますよ」。相手がフェアゾーンで飛球を落としてゴロになれば、最悪三重殺になる可能性もある。同コーチは嫌な役目をいとわず、愛のムチを入れた。

 秋季キャンプでは戦力の底上げを目指し早朝からバットを振りまくり、筋力トレーニングにも励んでいる。だが野球はそれだけではない。この日の紅白戦では打順に関わらずスクイズやバントのサインが頻繁に出た。疲労のたまる状況でも走塁も含めた細かい野球が求められる。妥協なき首脳陣の姿勢がにじみ出た。

 金本監督もコーチの熱血指導を支持した。「フェアゾーンに行けば、下手したら、トリプルプレーになる。コーチがちゃんと言うべきだと思う。一塁をセーフになるように走らないと。怠慢と言われても、仕方がない」。プロ1年目からブレークを果たしたが、来季はさらにチームの中心的存在になってもらわなければならない。指揮官も現役時代には走塁にこだわりがあった。FA補強に打って出る金本阪神だが、若手の台頭もリーグ制覇には欠かせない要素だ。時には厳しい姿勢も見せて、成長を促す。【田口真一郎】