目指すは球界野手初の3球団制覇だ。オリックスから阪神にFA移籍した糸井嘉男外野手(35)が29日、都内で「第45回三井ゴールデングラブ賞」の表彰式に出席した。来季は日本ハム、オリックスに続き、野手で史上初となる3球団での受賞が目標になるが、「トライする」ときっぱり。金本阪神の来季チームスローガンの「挑む」も心得、チャレンジャー精神旺盛だ。

 壇上にいる誰よりも、糸井の表情は落ち着いていた。日本ハム、オリックスで堅守を誇り、現役最多となる7度目のゴールデングラブ賞を受賞。だが、大目標には続きがある。野手で在籍3球団で同賞を受賞すれば史上初の快挙。歴史的偉業の挑戦権を伝え聞くと、ニカッと笑顔を見せて堂々と言い放った。

 「トライします!」

 ラグビーのトライポーズをマネながら、上機嫌での挑戦宣言だ。3球団での同賞獲得は、投手では工藤公康(西武、ダイエー、巨人)が達成している。だが、野手では1972年(昭47)に前身のダイヤモンドグラブ賞が制定されて以来、誰ひとり達成できていない。一見不可能に思える大記録だが、来季阪神のチームスローガンも「挑む」。「超人」と評されるこの男なら、新たな1ページを記すことは十分可能だろう。

 根拠はこの日肩を並べた先人たちの名前を見てうかがい知れる。外野手での7度目の受賞は、00年のオリックス・イチロー(現マーリンズ)、阪神新庄剛志(通算10度)以来5人目の快挙だ。「イチローさんと新庄さん、まだまだそのクラスにはいけてない。もっと練習していかないと」。そう謙遜したが、「2桁(受賞)いきます」と3球団制覇の先にある大台到達にも意欲をのぞかせた。

 糸井伝説の舞台は来季から甲子園へと移る。「天然芝ですし気持ちがいいですね」と、糸井自身も聖地に対して好感触を抱いている様子だ。今季記録した6失策の減少と4補殺の増加にも「(それぞれ)狙っていきたい」と意気込んだ。

 壇上では守備の秘訣(ひけつ)を問われ「根性です」とニヤリ。糸井節で会場を沸かせた。会見の最後、同席した広島鈴木がこんな発言をした。「糸井選手のような選手になれるよう頑張ります」。いまや同じプロ野球選手からも憧れの存在となった。来季は虎で球史に名を刻む活躍をみせる意気込みだ。【梶本長之】