守護神返り咲きへ、決意の直訴を敢行した。日本ハム増井浩俊投手(32)が2日、札幌市内の球団事務所で年俸2億2000万円プラス出来高払いで契約を更改した。来季が2年契約2年目のため現状維持となったが、交渉の席上で球団側へ本音を吐露。今季は開幕は抑えも不振で先発に配置転換。6連勝などローテーションの軸となったが再度、クローザーに挑戦したい意向を伝えた。(金額は推定)

 秘めていた胸の内をストレートに、届けた。寡黙な増井が、珍しく強烈な意思表示をした。2年契約2年目で年俸2億2000万円プラス出来高払い、今季と同等の条件提示にサイン。交渉の席で、球団幹部らから来季の起用法についての自身の意向を問われると覚悟を決めた。守護神への復帰希望を伝えた。「試合の最後を締めたい。あの緊張感の中でもう1度、やりたい」と動機を明かした。

 ブレークの裏で、本能が目覚めていた。14年途中から抑えに定着して昨季は39セーブ。今季も開幕から大役を任されたが、つまずいた。不振で2度の再調整、2軍降格を経験した。2度目の7月に先発転向の打診を受けて承諾。8月に昇格すると、先発8試合で6勝1敗と抜群の安定感で先発陣の1枠を奪い取った。シーズン終盤の勝負どころで自身7連勝フィニッシュと、起爆剤になった。

 4年ぶりリーグ制覇、10年ぶり日本一への原動力の1人になったが、複雑な思いを抱えていたという。「最初は先発で結果が出ないと思っていたので。それが、うまくいったので…」。当初は一時的な措置で、抑えへのカムバックをもくろんでいたが、活躍もありかなわず。先発機会もあった日本シリーズでベンチから中継ぎ陣に声援を送っていると、ふと自問自答した。

 増井 応援している時に「何で自分があの場にいないんだろう」と思ってしまっていたので。

 最終判断は「(先発ローテーションから)外せない」と話したことがある栗山監督らに委ねられる。増井の代役で奮闘したマーティン、谷元ら他候補もいるだけに、希望が通るか否かは不透明な状況ではあるが、前守護神としての信念と美学を貫いた。出来高払いの細部の条件も、中継ぎとして適用されやすい項目を維持もした。「セーブ王を1度、とりたい。まず40(セーブ)という数字を目標にしていきたい」。真っ正面から投げ込んだ思いの行方が、狙う2年連続日本一へのポイントになる。【高山通史】

<増井の今季道のり>

 ◆開幕 抑えとして開幕3戦目の初登板でセーブ。

 ◆再調整 不振のため5月4日から2軍へ。同14日に再び出場選手登録され、抑えとして即日の西武戦で1回無失点。

 ◆再び降格 6月19日中日戦まで登板2試合連続2失点と不調が続き、抑えをマーティンに譲る。

 ◆通達 2軍調整中だった7月8日、1軍に呼ばれ栗山監督と会談。先発転向を言い渡される。

 ◆6年ぶり 8月4日ロッテ戦で1年目の10年以来の先発。勝ち星は付かなかったが5回無失点の好投。

 ◆先発勝利 8月18日オリックス戦で8回途中4安打1失点、先発として6年ぶり白星。

 ◆2桁勝利 今季最終戦の9月30日ロッテ戦で、引退登板の武田勝の2番手で今季10勝目をマーク。

 ◆大舞台 日本シリーズでも2度先発し、11月に強化試合を行った侍ジャパンのメンバーにも選出。