台中で食事を終えて街を歩いていると、夜12時近くなのに、異様な行列ができていた。湯気が立っている屋台がある。のぞき込むと水槽にいたのはザリガニ。店の奥に目を移すと、テーブルに座って、殻をむいておいしそうに食べている。

 字で表すと「!」だ。おかゆにして食べるようなのだが、日本人なら絶対に目をむく光景だ。掛布2軍監督も、この話題を知るや、ビックリしながら「食べられるのか!? まあ、ロブスターの小物だろ」と妙に納得し、若手記者に「食べてみろよ」と腰を引きながら言う。百戦錬磨の本塁打王をおじけづかせるザリガニたるや、恐るべし。ともかく本当に味覚だけは国によって千差万別だろう。

 その数日前は火鍋をつついたが、大きいレバーのような固体が浮いていた。かじると、何の味もしない。不気味なので、店員に聞けば「Duck blood」と筆談で答えてくる。また「!」である。調べてみたら「鴨血」というそうで、アヒルの血は滋養強壮の食材。火鍋に欠かせないレパートリーなのだという。なんだかなあ…。初海外で、台湾のウインターリーグでも奮闘した阪神石崎は「ニオイに慣れないです。コンビニに入るだけでも独特ですから。小籠包には感動しましたけどね」と笑う。こちらはまだ序の口だが、しっかり異国の洗礼を浴びていた。

 ◆酒井俊作(さかい・しゅんさく)1979年(昭54)、鹿児島県生まれ。京都市で育ち、早大卒業後の03年入社。阪神担当や広島担当を経験。今年11月から遊軍。趣味は温泉めぐり。