「神ってる」という言葉とともに、広島鈴木誠也外野手(22)の名は全国に広まった。先発の座をつかみかけた6月18日オリックス戦。2点を追う9回1死一、三塁で平野に追い込まれると、ノーステップで待った。抜けたフォークを捉えた打球は左翼席へ突き刺す、2戦連続サヨナラ本塁打。広島では日本一になった84年の長嶋以来2人目の快挙でチームの勢いは加速した。

 緒方監督も「今どきの言葉で言うなら、神ってるよな」と興奮気味にたたえた1発は、今季のハイライトの1つとなった。

 翌日も3試合連続決勝弾の離れ業。その後は5番に定着し、25年ぶり優勝の大きな原動力となった。打率3割3分5厘、29本塁打、95打点。ゴールデングラブ賞、ベストナインに選ばれ、来春に開催されるWBC日本代表にも選出された。

 ブレークは偶然ではない。お立ち台で「最高でーす!」と叫ぶムードメーカーとなるキャラクターは一面に過ぎない。2軍時代から夜間練習を1人行い、今でも夜中にベッドから跳び起きてバットを握ることがあるという。類い希な才能に、努力という水を与えたことで広島と日本球界が期待する次代のスラッガーと進化を遂げた。【広島担当=前原淳】