金本阪神1年目はスローガン「超変革」を地で行った。開幕戦は1番にルーキー高山、2番に高卒3年目で1軍経験のない横田を起用。チームの顔だった鳥谷を6番に配置する大胆なオーダーでスタートした。7月24日広島戦では667試合連続フルイニング出場していた鳥谷を先発から外し、夏場以降は高卒4年目の北條を遊撃に定着させた。

 16年に1軍初出場した選手は計11人。首脳陣は1年間、過去の実績にとらわれず、全選手の力量をフラットに見極めるスタイルを貫いた。育成契約で埋もれていた原口を支配下登録させて開花させるなど、聖域なき競争はファームでくすぶっていた若虎たちの目の色を変えさせた。チーム全体の経験値が一気に引き上げられたのは明るい兆しだ。

 一方でシーズン終盤、完全に1軍で居場所を確立していたのは高山、北條、原口ぐらい。多くの若手選手は1軍の壁をぶち破れず、2軍に戻った。高山らも来季は弱点や癖を徹底的に突かれることは必至。「2年目のジンクス」が心配される中、やはり大黒柱たちの底力が必要になる。

 チーム90本塁打は今季リーグ5位、59盗塁は同最下位だ。糸井のFA加入で盗塁増に一定のメドは立ったが、三塁レギュラーと見込まれる新外国人キャンベルの実力は未知数。今季打率2割3分6厘でレギュラーの座を失った鳥谷、左アキレス腱(けん)断裂からの再起を期す西岡、今季7勝どまりに終わった藤浪らの復活なくして、V奪回は想像しづらい。

 実力者たちが例年通りの働きを見せられるか。若返りを図るチームだからこそ、どれだけ土台が安定するかによって、4位からの巻き返しが左右されそうだ。【阪神担当=佐井陽介】