プロ野球関係者が1年でもっともせわしなく移動する1日だろう。1月31日は球界にとって「大みそか」だ。阪神でも伊丹空港に金本監督ら首脳陣のほか、フロント陣も現れ、虎番も一斉に乗り込んだ。沖縄への機上で日刊スポーツをめくる。鳥谷の高校時代を紹介する紙面には「淡々と黙々と 背中で引っ張る陰のリーダー」の見出しが躍る。

 ふと、阪神ナインを見渡してみた。先頭に立ち、チームをグイグイと引っ張る「顔」が見えない。昨年11月から33歳で選手会長に就いた狩野恵輔も「そこが阪神にとって課題」と指摘する。主将の39歳福留や投手陣を束ねる36歳藤川ら、強烈なキャプテンシーを持つ主力はベテランだ。20歳代中盤以降で不動のレギュラー。この条件にかなう選手がなかなか現れない。歴代選手会長の就任年齢を見ても現状が浮き彫りになる。

 00年 桧山 31歳

 03年 今岡 29歳

 05年 赤星 29歳

 09年 鳥谷 28歳

 11年 関本 33歳

 13年 上本 27歳

 16年 狩野 33歳

 球団関係者の話を総合すれば、15年オフも任期2年を務めた上本から後任の打診があったという。だが回答を保留。「1年待って、その間に選手会長にふさわしい選手が出ればと考えていたようです」と関係者は続ける。適任が現れず、大役を買って出た。狩野は前橋工でも主将を務め、竹を割ったような性格だ。2月は2軍安芸から始動するが「今年しっかりやって優勝するために、どうすればいいか」と腹をくくった。

 阪神最長の在籍17年生はビジョンを持つ。11月の選手会納会で就任し、新役員と膝を突き合わせた。副会長の梅野に「俺が選手会長だけど裏でしっかりと動けるように。裏方の仕事もできるように」と言えば、藤浪にも「自分でどんどんやらないといけない」と自覚をうながす。特筆は昨季、ルーキーだった高山の役員入りだろう。狩野は「通常(役員は)3人だけど相談して4人にしました」と説明し、7年目の中谷とともに指名した。異例の「選手会5人制」は新リーダー登場を望む意思の表れだ。2年目の金本阪神が動きだす。新時代へのうねりをとらえつつ、奮闘を伝えたい。

 ◆酒井俊作(さかい・しゅんさく)1979年(昭54)、鹿児島県生まれの京都市育ち。早大大学院から03年に入社し、阪神担当で2度の優勝を見届ける。広島担当3年間をへて再び虎番へ。昨年11月から遊軍。今年でプロ野球取材15年目に入る。趣味は韓流ドラマ、温泉巡り。

 ◆ツイッターのアカウントは@shunsakai89