まず、もっとも触れるべき「旬なハナシ!」をこれまで書けなかったことを謝りたい。誰もが注目する新外国人エリック・キャンベルについてである。だって書けないのだ。球界の誰もが「助っ人は開幕するまで分からない」と口をそろえる。ミステリアスだからウワサが広がるのも早い。先日も他球団の編成担当と顔を合わせるなり「ゲレーロはすごいぞ。厄介だな。ビシエドもいるし」と言われた。発信源は実戦でアーチを量産する中日の新顔だ。

 さて、宜野座である。キャンベルの「顔」が一向に見えてこなかった。優しげな面持ちではなく、プレーヤーとしての本性である。いまも、評価するのは時期尚早だと考える。午前中、珍しい光景を見た。内野手だが、シートノックで左翼も守る。その意図をチーフ兼守備走塁コーチの平田勝男は「左翼が一番、自信あると言っていた。シーズン中は何が起こるか分からないからね」と説明した。

 首脳陣はシーズンに向けて危機管理する。だから、左翼の守備力をチェックするのは当然だ。福留の休養日の外野起用はオプションの1つか。一塁、二塁、三塁を守るなど、器用だし、重宝する…。って、誰の話を書いてるんだ。このチームに必要なのは大砲の助っ人だ。この補強ポイントは昨季終了時点から明白だったはず。本来は打力を期待して獲得しているはずの助っ人だが、なぜか「ユーティリティー」な一面ばかりが際立ってしまっている。

 器用貧乏にならないかと不安がよぎる。シートノックを見ていた球界関係者も「打撃に影響しないといいですけどね」と指摘した。野球は打って守る。この繰り返しである。だが、プロ野球である以上、どこに意識を置くべきか比重のかけ方があるはず。強打者なら打撃の人であるべきだ。午後、ドーム内をのぞくとキャンベルが打撃マシンに向き合って構えていた。捕球を繰り返し、入念に一塁ミットの形を作っていた。バットは握っていなかった。

 キャンベルは悪くない。メジャー通算7本塁打。ずっと、このスタイルで勝負してきたのだろう。13日の練習試合DeNA戦も志願出場。「トータルのスイング数も(メジャーと)そんなに変わらない」と話すなど、練習熱心だ。でも、打ってくれないと金本阪神2年目は本当に困ったことになってしまう。(敬称略)