これがカープ野球だ。オリックスとのオープン戦は敗色濃厚の8回1死からの大逆襲で引き分けに追いついた。下位打線、脇役もなんの、あきらめない執念での好ゲーム。マツダスタジアムに詰め掛けた2万560人のファンは大いに沸いた。

 いやな展開だった。広島が地元のオリックス・ドラフト1位の山岡に立ち上がりからピシャリと抑えられた。5回までは新加入のペーニャが四球を選んだだけで無安打だ。6回、ようやく8番石原が安打したが7回まででわずか2安打無得点…。オープン戦とはいえ、新人にひねられての敗戦はいただけないところだ。

 だがそこで終わらないのが昨季のリーグ王者だ。3点を追う8回、ようやく山岡を攻めた。1死からWBC代表菊池の不在で二塁を任された庄司が、一塁ベースに当たる幸運な二塁打で突破口を開いた。

 1死二塁。ここで昨季、代打の切り札として活躍した小窪が意地を見せた。2球で簡単に追い込まれたが3球目のスライダーにバットを出し、体勢を崩しながら右前に落とした。これで庄司がかえり、ついに山岡をマウンドから降ろした。

 1度ついた勢いは止まらない。2番手ヘルメンも攻めた。2死後、途中出場の船越が四球を選び、ここまで無安打だった2番堂林が三塁手の手前でイレギュラーするラッキーな適時打で1点差。さらに途中出場の育成選手・バティスタが詰まりながらも中前に落とす同点適時打だ。一気に攻めた3得点で追いついた。

 「あそこは食らいついていった。崩されても右に打てるように意識して」。そう振り返った小窪は試合前、緒方監督とじっくり時間を使っていた。トス打撃を上げてもらっていたが途中から2人で身ぶり手ぶりでタイミングを取る練習を約20分。「いいアドバイスをもらいました」と手応えを感じた試合となった。

 緒方監督は「打線は7回まで完封ペース。残念な流れだったけど8回の数少ないチャンスで、限られた機会の選手が結果を出したので評価します」とうなずいた。開幕まで10日。脇役のあきらめない活躍に、指揮官も手応えを感じていた。【編集委員・高原寿夫】