広島ドラフト1位の加藤拓也投手(22=慶大)が快投デビューを飾った。ヤクルト相手に9回1死までノーヒットノーラン。87年近藤真一(中日)以来の初登板で無安打無得点の夢は、バレンティンのヒットで破れたが、見事リーグ新人一番乗りの初勝利をつかんだ。昨年リーグ優勝した広島に強力な新戦力が登場だ。

 鋭い当たりが三遊間を抜けていった。広島加藤の大記録はあと2人のところで途絶えた。無安打投球は9回1死からバレンティンに打たれて消えた。だが「こんなもんだなと。そんなに甘くないなと思いました」。それよりも初登板初先発での初白星を「ホッとしました」と喜んだ。雄平に適時打を浴びて降板も、8回1/3を投げ2安打1失点の上々デビューを飾った。

 150キロを超える直球が見事にコーナーに散り、カウント球、決め球の2種類のフォークを操った。だが長所と短所は表裏一体。ストライクとボールが極端にはっきりし、突如四球を出した。「ヒットはもっと打たれてもいいけど、四球を減らさないと」。2回、3回はともに2死から連続四球。野手に代わる代わる声を掛けられ、捕手の石原にも導かれて踏ん張った。

 あの草むしりを忘れない。転機は慶応高時代の2年。地肩の強さを買われ、捕手から転向したての練習試合。加藤の恩師で同校前監督の上田誠氏が明かす。「荒れに荒れてね。で、先輩の言うことも聞かなかったんですよ。ふてくされてね」。まずは人として成長してほしい。監督は理由を告げず、草むしりを命じた。叱ったのはこの1度だけ。「あれで変わりましたね。考えて、吸収するようになった」と恩師。今季は開幕前に2軍に落ちたが、弱点と向き合いフォームを修正。目線を変え「常に考えて」課題に向き合った。