広島ドラフト1位の加藤拓也投手(22=慶大)が快投デビューを飾った。ヤクルト相手に9回1死までノーヒットノーラン。87年近藤真一(中日)以来の初登板で無安打無得点の夢は、バレンティンのヒットで破れたが、見事リーグ新人一番乗りの初勝利をつかんだ。

 加藤が野球を始めたきっかけは、実は勉学のためだった。

 幼少期から「東大に行かせたかった」という父弘志さんから英才教育を受けた。3歳と6歳を教育の節目とし、まだ字を読めない3歳時に本を与えられ、6歳時には理解するよう教えられた。母裕子さんからは野菜中心の手料理で栄養管理を徹底された。だが、小学生時代に“肥満体形”と指摘されたため、脳への影響を考慮し、両親はスポーツをやらせることに。最初はサッカーを始めたものの、体形からポジションはゴールキーパーとなり、運動量の少なさに野球に転向することになったという。

 高校時代も、プロ野球ではなく東大を本気で目指した。結果的に内部進学で慶大入り。「大学からプロへ行けなければ、野球をやめる」と父と約束し、就職浪人を覚悟して野球にすべてを注ぎ、12人しかいないドラフト1位でプロ入り。3000人超が入学する東大よりも、狭き門を突破した。惜しくも逃した初登板での無安打無失点は、史上2人目の大記録だった。ド派手なデビュー戦を飾った加藤には、プロ野球界でエリート街道を突き進んでもらいたい。【広島担当・前原淳】

 ◆慶大出身投手の初登板勝利 2リーグ制後、57年3月31日国鉄戦の藤田元司(慶大-日本石油-巨人)、69年4月12日巨人戦の藤原真(慶大-鐘紡-アトムズ)に次いで3人目。藤田と藤原はともに社会人経由の入団でリリーフ登板。慶大から直接プロ入りした投手では加藤が初めて。