崖っぷちの男がチームの連敗を5で止めた。8回4安打無失点で今季初勝利のロッテ唐川侑己投手(27)は、お立ち台で「今日ダメなら2軍と思って気合を入れて投げました」と言った。スタンドからは笑いが起きたが、本当にそうだった。ここまで3戦3敗。首脳陣の考えは「6回4失点以上なら2軍」。唐川は知らされていなかったが「10年もいる。だいたい分かります」。負けられなかった。

 1球1球に気迫があった。序盤は真っすぐ中心。初回16球のうち12球を投げ、いずれも140キロ以上。好調オリックス打線を力で押し込み、ゴロを打たせた。「ずっとやりたかったこと。この3試合は変化球が多くなって、かみ合ってなかった」。2回には最速148キロを記録。プロ1年目に2軍戦で出して以来で、1軍戦に限れば自己最速を2キロ更新した。今季初めてバッテリーを組んだ吉田との息もピッタリで、テンポよく8回まで投げ抜いた。

 勝てない間も、ぶれなかった。「当然、悔しい。ただ、どうであれ次の登板は来る。やるべきことは変わらなかった」と明かした。プロ10年目。柱となっているべき存在だが、ここ3年は平均5勝止まり。変化のきっかけは首脳陣がくれた。涌井、石川に続き、3月初めに早々と開幕ローテ入りが決まった。近年ではなかったこと。「任せてくれてるんだと。一層、自覚を持たせてくれました」と受け止めた。連敗中、野手が試合後に打ち込む姿も見ていた。「みんな勝つためにやってます」。だから、次も勝つ。【古川真弥】