レアすぎる大暴投だった。タレント稲村亜美(21)が始球式を行ったが、思い切り引っかけてバッテリー間の真ん中でワンバウンドした。

 驚いたような表情で口を手でふさいだ。球速表示は「58キロ」と出たが、球団の公式見解では「測定不能」だった。

 いつものように自己最速103キロの更新を狙っていた。だが今回は勝手が違った。プロトコーポレーションのスポンサーデーで、自身がCM出演する「グーネット ID車両」のCM衣装で登板した。普段より露出が多いコスチュームに、乙女心が邪魔をした。「ポロリが気になって…」。投球前からスタッフに入念にチェックしてもらい、マウンドに向かっていた。

 一方で「CMの衣装だったので気合は入っていた。“お色気”と思われたくなくて、本気で投げようと思っていた」とも明かす。心が揺れていた。ドアラ人形の顔を見て、気持ちを落ち着かせようとしたが「足が震えていました」。昨年7月にも始球式登板し、CM撮影でも使用していた同ドームだったが、平常心ではいられなかった。

 アスリートならではの事情もあった。中日の先発ジョーダンは投球プレートの三塁側を踏んで投球練習していた。普段は一塁側の端を踏んで投げる稲村だが「神聖な場所なので」とマウンドを荒らさないように初めて三塁側から投げていた。ジョーダンからは「ダイジョーブ、ダイジョーブ」と励まされたという。

 ともかく、まさかの不覚にショックありあり。ワンバウンドは記憶にある限りないという。「(原因は)リリースですね。まずいです。恥ずかしい。一生こういう球は投げないようにします」。笑顔の中に、悔しさをにじませた。