9回は野選で1点を失い、同点に追いつかれた。「あそこを1点でしのいだからサヨナラ勝ちにつながった」と、恥じ入るところはない。マウンド上ではポーカーフェースが定番の右腕だが、思いは野手にも伝わっていた。

 涌井は前回登板した12日の日本ハム戦で、1試合6被本塁打とパ・リーグワースト記録を更新した。その後、伊東監督から「どういう状況でもチームを救うのがエースだ」と諭されていた。この日の快投には監督も「こないだのこともあったし、気迫の投球が野手にも伝わった」と手放しでほめた。落合コーチは「相手と戦いながら、ウチの投手にもメッセージを発信してくれた」と、ミーティング通りのストライク先行投球に脱帽した。

 首位楽天をたたき、10日ぶりの勝利を手にした。伊東監督は「1つ勝つ苦しみをあらためて感じた。明日にいい流れをつなげていかないと。今日はちょっと、ゆっくり寝られるかも」。涌井の好投が、すべてのロッテ関係者を笑顔に導いた。これがエースだ。【斎藤直樹】