有言実行の一打だった。延長10回のサヨナラ機。ロッテ根元俊一内野手(33)はフォークだけを待っていた。8球目の狙い球を一閃(いっせん)。「ずっと待っていた球が最後にやっときた。何とか前に飛んでくれてよかった」。打球が右前に弾むのを見届けると、安堵(あんど)の表情をみせた。

 開幕から2軍生活。尊敬する男の復活劇がカンフル剤になった。5月9日。ロッテを戦力外となりヤクルトに加入した大松が広島戦で代打サヨナラ本塁打。ともに自主トレを行ってきた1つ年上の先輩の1発を「本当によかった!」とわが事のように喜んで続けた。「次は僕の番です」。

 出番を待ち続け、14日に1軍昇格。この日が初の3番起用も決して気負うことはなかった。「後ろには福浦さんがいる。つなぐ気持ちで力まず打席に入れた」。そう言えたのは己の役割を自覚し「時が来るのを待ちます」と決して腐らず汗を流し続けたからだった。

 歓喜のウオーターシャワーを浴びながらも、喜びを爆発させることはなかった。「本当はもっと喜びたかったですけど…。ここで感情を表に出しても試合は続く。今日は大事な1勝ですが、まだまだ上を目指していかないといけない」。上だけを見つめ、黙々とバットを振り続ける。【佐竹実】

 ▼ロッテ根元のサヨナラ安打は13年9月1日日本ハム戦以来4本目。延長戦では08年4月13日日本ハム戦の10回裏、無死満塁で武田久から左前打を放って以来9年ぶり2本目。根元のサヨナラ打でこの試合のチーム安打は10本目、4月28日西武戦から続いた連続1桁安打は球団ワーストタイの18試合で止まった。