19日に全日程が終了した交流戦は、パ・リーグが通算56勝51敗1分けで、セ・リーグに8年連続勝ち越しを決めた。交流戦の検証と、リーグ戦再開後の展望を、日刊スポーツ評論家の三浦大輔氏(43)が分析した。

 交流戦を貯金2で終えた阪神は、非常に速いペースで真のチーム力を身につけている。「優勝に絡んでくるのは来年かな」と見ていたが、首位の広島と渡り合い、夏場以降も激しくペナントを争うのではないか。若手、中堅、ベテラン。すべての世代に昨季からの上積みを感じ、しかもバランス良くかみ合っている。

 上積みにもさまざまな種類があるが、阪神の場合は選手個々の「質」が上がっていると思う。先発の秋山は投げっぷりが良く、能力が高かった。そこに、規定投球回に達しているセ投手の中で最少タイの四球数が示す制球力が伴ってきた。交流戦3勝と活躍したのは、強いボールをストライクゾーンの中で制御し、勝負できたから。メッセンジャー、能見との強力な3本柱が出来上がった。

 ブルペンはリーグで最も安定している。桑原、マテオ、ドリスの3右腕は、直球とスライダーというシンプルな組み立てで三振を奪える球威がある。左腕の高橋も加え、あらゆるゲーム展開に対応できる。

 野手では中谷、原口、高山ら若手に成長を感じる。強く振るパワーがある上に、積極的に打ちにいく中でボールを見極める力も備えてきた。「ここに投げておけば大丈夫」という穴を持っている打者は、投手からすれば意外と怖くない。彼らは、昨季よりも確実に「嫌な打者」になっている。

 中堅から下の世代が押し上げる格好で、ベテランも復調している。代表は鳥谷だ。打撃は元の状態を取り戻している。顔面に死球を受け鼻骨を骨折しても離脱せず、黙々とプレーする姿で引っ張っている。チーム内に定位置争いの緊張感があり、相乗効果を生んでいるのだろう。個々の「質」を上げることも、競争意識を植え付けることも、金本監督が就任からこだわってきた方針。たくましい強さは簡単に崩れないと思うし、同じように骨太のチームを作り上げてきた広島との首位争いが楽しみでもある。