26日のドラフト会議を目前に、慶大の岩見雅紀外野手(4年=比叡山)がリーグ記録を更新した。0-0の5回、先頭で打席に入ると左翼中段に通算20号(今季6号)をたたき込み、5試合連続本塁打とした。1925年(大14)に始まったリーグで連続本塁打は過去4試合が3人。岩見がそれを超えた。年間11本(春5、秋6)はリーグタイとし、通算本塁打は歴代3位の岡田彰布(早大)に並んだ。残り2カードで先輩・高橋由伸(現巨人監督=23本)の記録に挑む。

 打った球種をまず覚えていない岩見が、この日は違った。「フォークです。今日は分かりました」。こういってニッコリ笑った。3度目の打席になった5回、先頭だった。代わったばかりの明大・高橋裕也投手(3年=向上)の130キロを逃さなかった。打球は左翼ポールを巻くようにして、中段まで飛んだ。

 0-0の均衡を破る価値ある先制アーチになった。「うまくバットに乗せられました」と振り返った。常に意識しているのは「強く当てる、振り切る」だ。相手投手のマークは日に日に厳しくなる。この日は1、3回と死球を受けた。「痛い、怖いですよ。でも僕、とろいんで」。本塁打したフォークも内角に来たが、逃げることはなかった。「足もとを動かさないことは意識しています。ここ1年前ぐらいからです」。ボールを最後まで見て、振り切る。この考えが、ここ1年の急成長、本塁打量産と重なる。

 試合後、報道陣の取材を受け、引き揚げようとしたときだ。岩見に20号の記念ボールが届いた。「これ、実家に送るだけですから。小学校から1個も飾ってないです」。滋賀県大津市に住む父長司(たけし)さん(59)にすべて送ることにしている。そのボールは段ボールに入れられ、倉庫に収まるという。「そんなものは現役を終わってから見ればいい」(長司さん)という教えで、高校時代に放った47本塁打のボールも倉庫で眠っているはずだ。「次を見ろ、ということじゃないですか」。

 5試合連続としたことで記録保持者の1人だった2年先輩の横尾俊建(現日本ハム)を超えた。一緒にプレーした仲だ。「こっちから連絡しません。あと3本打て、とか言われるだけですから」。その3本打てば高橋由伸と並ぶ。「OB総会であいさつしたことはあります」。高橋先輩が記録を達成してから20年、岩見はその先輩を超えようとしている。【米谷輝昭】

 ◆他大学連盟では 主なリーグの連続試合本塁打は、東都が4試合で85年秋の古川慎一(亜大)と94年秋の井口忠仁(青学大)が記録。首都も4試合で72年秋の森山正義(明学大)と96年春の里崎智也(帝京大)が記録。