阪神の安藤優也投手(39)と新井良太内野手(34)が、引退試合となった今季最終戦(甲子園)で絶妙のコンビネーションを見せた。8回に登板した安藤が三遊間へ痛烈なゴロを打たれたが、これを新井が飛びつき、最後の1アウトをプレゼントした。これでセ、パ両リーグの全日程が終了し個人タイトルが確定した。日本シリーズ進出を懸けた上位3チームによるクライマックスシリーズ(CS)は14日に開幕する。

 マウンドには歩んできた人生が詰まっていた。今季で引退する安藤が戦友や2人の息子から花束を贈られる。5度、仲間の手で胴上げされる。「憧れの甲子園が仕事場になり憧れの甲子園で最後にユニホームを脱げる私は幸せ者です」。聖地の夜空に声を響かせた。

 万感の最終戦だ。6点リードの8回に登板。金本監督から白球を渡され、声を掛けられた。「きっちり1人でアウトを取れたら代わろうか。もし打たれたら次も行こう」。1球目の直前、白い投手板に触れ、黒土を手で払う。先頭石川に速球をファウルで粘られた末に浮いたフォークをとらえられ、左翼に被弾。「自分の気持ちのこもった球を投げようと思った。打たれると悔しい」と苦笑いした。

 その直後だ。代打野本のゴロが三塁を襲う。同じく引退する新井がダイブ好捕した。打者2人に最速141キロで魂の9球を投げた。「ああいう楽しいマウンドは初めて」。涙はない。さわやかに大勝負を終えた。

 外角低め速球を生命線に486試合に投げて77勝。08年から3年連続開幕投手勝利は球団初だ。「まだ日本一のチャンスがある。今年日本一になってくれたら、現役中に日本一になれたと言える」と笑顔で言う。エールを送りつつ、2度の優勝に貢献した好投手が球場を去った。【酒井俊作】