キャプテンのバットが日本一の扉を開いた。ソフトバンク内川聖一内野手(35)が、1点差の9回1死から左翼席へ起死回生の1号同点ソロをたたき込み、サヨナラを呼んだ。故障による2度の戦線離脱を挽回するポストシーズンでの大活躍。頼れる「4番」はナインから胴上げされ、5度宙に舞った。

 何度も拳を突き上げた。1点差の9回裏1死。内川のバットはDeNA守護神・山崎康のカウント1-1から139キロのシュートに反応した。腰をくるりと回転させ、振り抜くと打球は放物線を描いて左翼席最前列へ。起死回生の同点1号。「正直、出来すぎだった。1度あのバッティングは捨てないといけないと思っていましたが、一番いいところで1本出てくれた。何とかしたいというみんなの思いが、僕のバットに乗り移ってくれたんだと思います」。内川は一塁ベースを回って何度もガッツポーズを繰り返した。

 頼れる男だ。歓喜のインタビューで、工藤監督は内川を呼び寄せ「最高の男です!」と大興奮。目をはらした内川も「シーズンはケガもあったし、みんなに日本一になるチャンスをもらえたシリーズ。日本一になりたかった」とほえた。

 バットでも言葉でもチームを鼓舞した。延長11回。ベンチ前の円陣で言った。「今日は絶対に勝たないといけない。デニス(サファテ)も3イニング目に入っている」。言葉通り、川島がサヨナラ打。チームは頂点に上り詰めた。

 今季は6月に首を痛め、7月には左手親指を骨折。2度の離脱の責任を感じていた。左手親指骨折の回復は遅かったが、日本一の目標のためキャプテンとして、4番として勝利に貢献する。その一心でグラウンドに立った。「ケガでチームにいられない期間が長かった。クライマックス、日本シリーズはチームが日本一になるチャンスをつくってくれた。結果で恩返ししたかったので、伴ってくれてうれしい」。CSファイナルでは史上初の5戦4発。MVPに輝くと、選手、スタッフを集めて賞金100万円で焼き肉会を開いた。

 激闘の末につかんだ日本一。喜びに浸りながらも、ライバルをたたえることも忘れなかった。「僕が横浜にいた時は、日本一になるっていうことを、ファンの皆さんに持ってもらう機会がなかったので」と、強くなった古巣DeNAにも敬意を示した。頼れるキャプテンはナインの手で5度宙に舞った。【佐竹英治】

 ▼内川が9回に同点本塁打。内川の日本シリーズでの本塁打は出場18試合目で初めて。また内川は10年までDeNA(当時横浜)に在籍。日本シリーズで古巣から本塁打は、09年第3戦で日本ハムから打った小笠原(巨人)以来9人目となった。なお日本シリーズで9回に同点弾を打ったのは、09年第5戦の亀井(巨人)以来8年ぶり。