野球はこういう人の熱意に支えられているのだな、と実感した。

 日本野球機構(NPB)の第5回アンパイア・スクールが、ロッテ浦和球場で行われている。プロの審判が講師となり、朝から深夜まで6泊7日で技術を伝える。最年長参加者の笠井篤司さん(52)は、北海道の北端に近い、離島の利尻島から3年連続3度目の参加となった。

 北海道の高校野球は、各校の教師が審判を務めている。笠井さんも母校の旭川北で監督に就いた経験を持つが、一方で23歳から審判としてのキャリアも積んできた。11年夏には全国選手権に派遣され、光星学院(現八戸学院光星=青森)-専大玉名(熊本)など1、2回戦で3試合の塁審を務めた。

 甲子園で審判の「奥深さを知った」一方で、悩みもあった。地元では講師役になる年齢を迎え「年上の方になってきて、だんだん(改善点を)言ってもらえなくなってきた」。そのため「言ってもらえるこんな機会はない。毎回新しい発見ばかり」とスクール参加を続けている。

 数学教師として勤務する利尻高には現在、野球部がない。同校は77年春に部員11人で全道準優勝し「利尻旋風」を起こしたが、少子化の影響で連合チームを含めても公式戦は15年秋の参加が最後となっている。それでも笠井さんは「後輩に手本を見せたい」と8万3000円の参加費を自腹で払いながら、往復で2800キロ以上の距離を渡る。

 スクールはプロ野球の審判を採用する目的とともに、審判の裾野を広げる意味もある。初めて台湾のプロリーグからも5人が派遣された。アジア圏から高校野球の地方大会まで、野球に審判は不可欠。「縁の下の力持ち」に感謝したい。【斎藤直樹】