南海、ヤクルト、阪神、楽天で監督を務めた野村克也氏(82)の妻で、昨年12月8日に虚血性心不全のため85歳で死去した沙知代さんの「お別れの会」が25日、都内のホテルで行われ、克也氏は涙を流して別れを惜しんだ。球界関係者や芸能界、政財界などから約1000人が集まり「俺が死んだらこれだけの人集まるのかな。サッチーがこんなに人気があるとは思わなかった。うちの宝です。窮地に立った時、常に前向きで『大丈夫よ』と。この一言でだいぶ助かりました」。そう言うと、こらえ切れずに涙があふれ出た。

 祭壇には約10年前に撮った笑顔の写真に、お気に入りの色彩豊かな衣装10点、アジサイ、バラ、カーネーションなど9500本の花が並んだ。「お別れの会」の最後には、克也氏がマイクを持ってあいさつ。

 「去年ぐらいに、半分冗談、本気半分で俺より先に逝くなよと言っていたんですが、先に逝かれてしまいました。(死去した日は)食堂のテーブルに頭をつけて動かないんですね。背中をたたいて『おい大丈夫か』って言ったら、たったひと言『大丈夫よ』って強気の言葉が返ってきて。それが最期になりました」。

 沙知代さんにかける言葉を問われると「ひと言、ありがとうしかない」と声を絞り出した。「地球は自分中心に回ってるような人生。これから先、どうして生きていけばいいんだろうっていうのが今の正直な気持ち。本当に大事な奥さんでした」。最後まで感謝の言葉を繰り返しながら、1人になった悲しさをにじませた。【前田祐輔】