今季、育成から支配下選手登録に復帰した楽天島井寛仁外野手(27)が13日、沖縄・金武町で始まった1軍の2次キャンプに参加した。2軍スタートも、50メートル5秒6の快足が評価されて10日から1軍に合流。“代走のスペシャリスト”として鳴らした元巨人の鈴木尚広氏(39)を理想に掲げ、今季首脳陣が打ち出した機動力野球の「顔」に名乗りを上げた。

 まるで獲物を狙う表情だった。走塁練習で島井は目をぎらつかせながら、自慢の快足を飛ばしに飛ばしてアピールした。昨年11月に支配下復帰を決めた今季6年目の男は1軍キャンプに背水の陣で合流していた。

 島井 そりゃレギュラーを取りたいという意識はあるけど、長打力では外国人にはかなわない。だったら自分は“代走のスペシャリスト”で生きていく。理想は元巨人の鈴木さん。

 かつて代走屋として生きてきた男がいる。鈴木尚広。8割以上の盗塁成功率を武器に20年のプロ生活を送った。島井にも50メートル5秒6の快足がある。中学まで陸上部にも所属し「今まで50メートル走では誰にも負けた記憶がない」。飼い犬よりも足が速いといわれる日本ハム大累は同年齢だが「負ける気はしない」と自信を見せる。

 チームは昨年、リーグ3位の135本塁打に対し、盗塁は同5位の42個に終わった。5年ぶりの日本一奪還のためには、走塁面の強化が必要だ。平石洋介ヘッド兼1軍打撃コーチ(37)は昨年2軍監督として、イースタン・リーグの盗塁王に輝いた島井を代走として重宝した。1軍に抜てきした理由を明かした。

 平石ヘッド 1軍の緊迫感のある試合の終盤に、代走としてどこまでできるかを試したかった。昨年、2軍ではノートに投手の癖を書いたりして、作戦面での貢献が大きかった。生きる道を決めた男は強いよ。

 今日14日から4日間で3試合の練習試合が行われる。「自分には走塁が求められている。足をアピールする最大のチャンス。持ち味を出して、勝利に貢献したい」。足で勝負すると腹をくくった島井が、チームの起爆剤となる。【高橋洋平】

 ◆島井寛仁(しまい・ひろひと)1990年(平2)6月19日、沖縄・浦添市生まれ。西原では甲子園出場なし。高校同期に中日又吉がいる。地元の社会人野球ビッグ開発ベースボールを経て、熊本ゴールデンラークスに入団し、スーパーに勤務しながらプレーしていた。12年ドラフト5位で入団。2年間は1軍での出場がなく、15年から育成契約。今季から支配下に復帰した。174センチ、70キロ。右投げ両打ち。

 ◆代走のスペシャリスト 16年に引退した元巨人の鈴木尚広は“代走屋”として鳴らした。通算200盗塁以上の成功率では、元南海の広瀬叔功を1毛差で抑えて8割2分9厘でトップ。通算228盗塁のうち、代走で決めたのは132個もある。他には元近鉄の藤瀬史朗や、元広島の今井譲二らが知られる。