巨人山口俊投手(30)が、元力士で亡き父・久さん(享年58)に四股を習った九州の地で勝った。ソフトバンク1回戦(ヤフオクドーム)に先発し、7回1失点。4試合連続の2ケタ奪三振は逃したものの、5月22日広島戦以来の自身5勝目を挙げた。7回1失点にまとめる安定感を発揮した「どすこい右腕」が、チームを今季交流戦初の3連勝に導いた。

 生まれ育った九州の地で蓄えた力をみなぎらせた。4回。山口俊は全てフルカウントから力勝負を挑んだ。先頭の中村晃を150キロ直球で詰まらせ一飛。続くデスパイネは最速の153キロ直球で空振り三振。4番柳田は7球目に148キロ直球でファウルを奪うと、最後はフォークで空振り三振に仕留めた。「困った時に真っすぐで押し込めるのが自分のスタイル」と7回5安打1失点。ソフトバンクをねじ伏せた。

 力強い球を投げるための体の強さは大分で育まれた。小さい頃から食べるのが大好き。力の源は母が作る手料理だった。ちゃんこ鍋もよく食卓に上ったが、大好物は肉汁あふれる手ごねハンバーグ。父から「お前を養っていけるか不安だった」とこぼされるほどの大食漢少年だった。

 投球と同じで食事のテンポも速い。高校時代、帰宅後、玄関を開けて食卓へ一目散。まずは、白米だけ口いっぱいにほおばった。少しでも早く食べるため1杯目は母に頼み、事前に準備してもらい少し冷ましてもらう。うどん用丼で食べている間にハンバーグが焼き上がり、おかわりで2杯目。毎日丼飯で3、4杯をペロリと平らげた。「たくさん食べたから今の体がある」と胸を張る。

 地元感が漂う偶然の“演出”もあった。公式戦では移籍後初のヤフオクドーム。3回、マウンドへ向かうと東京ドームでの登場曲、布袋寅泰の「バンビーナ」が流れた。イニング間イベントで使われる曲が偶然一致。お立ち台では地元凱旋(がいせん)勝利と振られ「特別意識はなかったですけど、勝てて良かった」と笑みがこぼれた。

 チームを交流戦今季初の3連勝に導き、敵地ヤフオクドームの連敗も5で止めた。高橋監督は「リズムよく投球してくれた。先発に勝ち星がつくというのはチームにとっても大事」とほめた。頼もしい九州男児が投手陣をどっしりと支える。【島根純】