日本ハムの1番打者、西川遥輝外野手(26)が記録的な四球数を重ねている。13日の阪神戦まで60試合出場で、49個は両リーグトップ。シーズン116個ペースで、パ・リーグ記録(14年楽天ジョーンズの118個)に迫る。交流戦も14四球で1位。2割前半の打率を四球による出塁で補い、チームの攻撃を支える。四球王の極意に潜入した。

 なぜ四球が多いのか? 直撃すると、意外な答えが返ってきた。「四球を取る気はないんだけどね…」。「オープン戦から、ずっと不調。打っても前に飛ばないからファウルになって、勝手に粘れちゃっている」。打撃そのものの状態は悪いが、自信を持って言えるのは「選球眼は、もともといい」。14年から4年連続で60個以上をマーク。敬遠四球が少ない1番を主に任されながら、確かな目で見極めてきた。

 優れた選球眼と打撃の不調が相まって、驚異の四球王が誕生した。城石打撃コーチが「3ボールから振らなくなった」と要因を補足した。以前はカウント3-0から打つこともあった。それが今季は、ほぼない。追い込まれるまでは「打て」のサインが出ていても我慢する。不調と自覚するだけに、打つべき球だけを待つ。フルカウントからボール球に手を出す打者も多いが、同コーチは「そこも我慢できている。意識がカウントに左右されない」。不動心が四球を生む。

 阪神戦の第1打席もフルカウントから我慢した。外角低め直球にバットを出しかけて止めた。「アレは完全なボール球。手を出しかけたことがダメ。やっぱり調子が悪い」と反省しながら今季48個目の四球で出塁。2番大田の打席で二盗に成功。過去2度の盗塁王に輝く西川が四球を選べば、二塁打と同等の価値がある。走られまいと慎重になる投手の球数もかさむ。この日も阪神先発の小野は初回だけで33球を投げた。

 2点を追う4回2死二塁で迎えた第3打席が真骨頂。3-0となると4球目のストライクは平然と見逃し。5球目も内角低めの変化球を見極めて49個目の四球。後続へ、しっかりつなぐと4連続長打単打を誘発して6得点のビッグイニングが完成。チームは連敗を4で止めた。西川は「ヒットが出てないから四球が増えてるだけ。ヒットが出るようになれば、そのうち減る」と話すが、果たす役割は大きい。チームで唯一の全試合スタメン出場を継続中。安定した戦いを見せる日本ハムの立役者だ。【中島宙恵、木下大輔】