今年の野球界もいろいろなドラマがあった。日刊スポーツの野球担当記者の印象に残った「言葉」を紹介する、年末恒例企画の「言葉の力」。喜び、悲しみ、怒り…、勝負師たちの本音が凝縮した数々の言葉から、2018年を振り返る。今回は「セ・リーグ編」です。

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巨人菅野「みんなで勝ち取った勝利だと思うので、一生忘れることのできない1勝になりました」(4月13日、広島戦でシーズン初勝利を挙げ、自身開幕2連敗を止めた。シンカー習得の影響など不調への臆測の声を結果ではねのけ、苦しみも糧にした=桑原幹久)

 

中日松坂「勝った瞬間、みんなの笑顔が見られて、僕も自然と笑顔になった」(4月30日、西武時代の06年以来、12年ぶりに日本で勝利。クールなマウンドと対照的な笑顔が印象的だった=伊東大介)

 

DeNA筒香「純粋に勝負が楽しかった。いけると思った球はいつも通り思い切り振ろうと思っていた。この機会に巡り会えたことに感謝の気持ちです。機会があれば、また勝負してみたい。結果は関係ないですね」(4月30日、中日6回戦であこがれだった横浜高の先輩・中日松坂と初対戦を終えて。いつもは勝負に徹する主砲が、少しだけ童心に帰って楽しんだ打席は格別の味だった=栗田成芳)

 

阪神才木「自分のボールが通用するのか、まだ分からない。だから受け身よりも攻めていく。真っすぐで押して、押して。インコースを使いながら決め球も腕を振って」(5月27日、甲子園での巨人戦。高卒2年目でプロ初勝利を挙げた。不安と緊張のマウンドで初々しさを感じた=真柴健)

 

阪神鳥谷「開幕2試合目でスタメンを外れた時、もう自分の中で連続試合出場は終わっていた。ケガとか疲れが理由じゃなく出られなくなったんだから。これが現実。受け止めて頑張るしかない」(5月下旬、歴代2位の連続出場記録が1939で止まる数日前の甲子園。Xデーを前に覚悟を決めていた=佐井陽介)

 

ヤクルト小川監督「『辛抱強くすれば人の心は開くんだ、出会いの失敗者になるなよ』って言ってたんだ。なるほどなと思ってね。それから、おれもジッと待つようになっちゃったよ」(交流戦の最高勝率達成前の6月上旬、保護司だった父・誠治さんの教えを回想。父譲りの我慢強さで再建し、昨季96敗のチームを2位に導いた=浜本卓也)

 

巨人岡本「苦しいっちゃ、苦しい。でも、本当にぜいたくな悩みですよね」(7月5日の試合前。4番で32打席連続無安打と不調に陥ったが、若き主砲は前を向いた。昨年は2軍暮らしが続き、1軍で戦う喜びを感じ続けた。不振すら“ぜいたく”と言える心の強さを見た=島根純)

 

広島下水流「みんなの思いが乗ったホームランだった」(7月20日、西日本豪雨後初の本拠地試合。1点を追うの10回2死一塁から逆転サヨナラ2ラン本塁打。言葉通り、球場全体が後押ししたような劇的弾だった=前原淳)

 

広島新井「3年後、5年後のカープを考えたときに、今年がいいんじゃないかと考えた」(9月5日に引退表明。自身の体力や技術の限界ではなく、チームの未来を思っての決断。広島愛の深さを感じさせた=前原淳)

 

中日松坂「甲子園という球場が力をくれたのかな」(9月13日、自身の誕生日に西武時代以来、12年ぶりの甲子園登板で今季6勝目、日米通算170勝。力投で現役継続をアピールした=伊東大介)

 

阪神矢野2軍監督「心技体の中で、俺の1番は絶対に『心』。ハート、メンタルがなんとかなれば、技術もついてくると思っている。そこをすごく意識した1年やった」(9月下旬、2軍監督1年目でウエスタン・リーグを制覇した直後に1年を振り返った。指導者としての手応えを感じたひと言だった。=古財稜明)

 

広島鈴木「ここまでプレーできていることは、奇跡」(9月26日、完全復活で3連覇に貢献。ただシーズン中は「(野球人生が)終わった」とすら思った昨年8月22日DeNA戦でのケガの影響を隠しながらプレーしていた=前原淳)

 

巨人岡本「1口目は今までにないぐらい、おいしかった。でも最後は苦かった」(22打席ぶりに安打を放った9月23日の阪神戦後、ビールを1杯だけ飲んだ。祝杯の味を不振に陥ったシーズン終盤と重ねた若き主砲。甘くないプロの世界で、苦しんだ先に至福があると知った=島根純)

 

中日岩瀬「長い道のりでした」(9月28日、ナゴヤドームでの阪神戦で通算1000試合登板。ポーカーフェースが、お立ち台でおえつとともに涙。鉄人とは違う人間・岩瀬が垣間見えた=伊東大介)

 

阪神金本前監督「一緒にやった選手、若手が一人前になってほしい。教えたことを肝に銘じて。何か、寂しいじゃないですか、僕が教えた選手が誰もレギュラーにならなかったというのは」(10月11日の退任会見で。3年、若手を育てた愛情と辞任する無念さが入り交じっていた=酒井俊作)

 

DeNAラミレス監督「コーチと私の間にギャップがあった。コミュニケーション不足はあったと思う。私自身が変わらないといけない」(10月10日、阪神25回戦全日程終了後に南場オーナーから続投オファーを受け、今季敗因を潔く認める。コーチ陣の助言に聞く耳を持たなかったことへの反省の弁に4年目への覚悟をにじませた=栗田成芳)

 

DeNA高田GM「会見で言い忘れたけど、ホントお前ら(担当記者)のおかげだよ。(試合前)お前らにベンチで悪態ばっかついていること書かれたら一発で終わりだからな!」(10月12日、7年間務めたGM職の退任会見後、担当記者に向けて。舌鋒(ぜっぽう)鋭い名伯楽が最後の高田節。もう毒づいてもらえないことが少し寂しいです=栗田成芳)

 

巨人原監督「野球に対する情熱、知識はずぬけている。(レギュラーの日本テレビの番組)ズムサタにはもう出られないけどね(笑い)」(10月23日、就任会見で新任の宮本投手総合コーチへの期待を聞かれて爆笑回答。日刊コムの今季野球部門のPV数でトップ10入りした=広重竜太郎)

 

ヤクルト由規「やると決めたからにはしがみついてでも野球をやりたいという気持ちを(ヤクルト球団に)伝えさせていただきました。現状では厳しいですけれどボロボロになるまで野球をやりたい」(11月2日、ヤクルト退団を表明。涙の決意表明に、野球への情熱が伝わってきた=浜本卓也)