法大OBで元巨人の江川卓氏(63=野球評論家)が2日、恩師をしのんだ。元法大野球部監督の五明公男氏が1日に大動脈解離のため死去。75歳だった。16年の「法大野球部創部100周年記念式典」での再会が最後となった。「監督が(私に)会いたがってる、と聞いていました。お会いして元気そうでいらっしゃったのに」と声を落とした。

「きちょうめんな方。朝練をサボったからよく怒られたものです」と懐かしみ、最も記憶に残るのは「監督のもとで『完全4連覇』(76年春~77年秋)を達成できたこと」と続けた。

もう1つの心覚えがある。法大入学時、受験勉強の余波で体重がベストの82キロから94キロにまで増えていた。そんな時に監督から示された気配りが、それだった。「『春のリーグ戦で投げることは考えなくていい。走って体を絞れ!』と、個人のコンディション作りを優先させてくれた。あれがなかったら(通算)47勝もできなかった」。

77年秋季リーグ、最終週の明大戦。その47勝目を挙げた試合後、監督から「明日も投げるか?」と問われた。同大の先輩、山中正竹氏の通算最多48勝に並ぶ一戦での登板への配慮だった。これを固辞したが「気を使ってもらってありがたかった」と振り返った。

五明氏は監督退任後も母校のスポーツ健康学部教授として教壇に立った。14年春「退職記念最終講義」が行われ、江川氏もOBとして聴講した。「あの日が(亡くなった日と)同じ3月1日だったことも、私には何やら因縁めいて感じられます」と追慕した。