東北初の女子硬式野球部として昨年4月に創部したクラーク仙台(宮城)が、連覇を狙う神戸弘陵(兵庫)に0-1の7回サヨナラ負けで屈し、初出場初Vの快挙を逃した。女子高校生史上最速の125キロエース右腕・小野寺佳奈(2年)が、初戦の2回戦から4日連続のマウンド。8安打も緩急をつけた投球で要所を締めたが、最後に力尽きた。今月からは新1年生14人が入部予定。男女通じた東北勢初優勝は、またも持ち越しとなったが、新元号「令和」初開催の全国選手権(7月26日開幕、兵庫・丹波市)で悲願を成就させる。

今大会343球目。7回2死一、三塁で、小野寺が選んだのは、渾身(こんしん)の直球だった。無情にも左中間に白球が転がった。「自分の一番自信のあるストレートで勝負したかった。悔いはないです」。わずか1点に泣いた。相手がマウンド付近で作る歓喜の輪から遠ざかるように、直前に失策した庄司美空(2年)のもとへ駆け寄り、抱き締めた。11人で力を合わせて準優勝した充実感と、悔しさが入り交じり、涙を抑え切れなかった。

東北女子球界の希望の星となったことは間違いない。7回のピンチで伝令役を務めた馬場優希内野手(2年)からの言葉は「野球を楽しもう、以上!」。強豪を撃破してきた“魔法の言葉”だった。試合後もスタンドからは「クラークの野球、楽しかったぞ」の声。優勝以上の拍手を浴びた。

小野寺は11年東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城・七ケ浜町出身。高台の自宅近くまで津波が押し寄せた記憶は鮮明に残っている。クラークの練習場も同町。「地元の方々が見に来てくれるし、応援してくれる。東北には(硬式野球部が)1校しかないし、知らない人も多い。結果を残して、期待に応えたいです」。震災復興、女子野球普及の使命も背負っている。

仙台には14人の新しい仲間も待っている。「自分たちにライバル心も生まれるし、もっと強くなれると思う」。自身の向上心にも拍車が掛かる。先月29日に161キロを連発したソフトバンク千賀滉大投手(26)は憧れの存在。「真っすぐだけでなく、三振を取れるフォークも魅力」。カーブ、スライダー、チェンジアップに「筋力をつけてから」と、新球種フォークを夏までに習得する意気込みだ。

次は昨年8強入りした夏の選手権制覇が目標。「王者にロースコアだったのは自信につながる。東北の男女で一番優勝に近いと思う」と力を込めた。まだまだ進化する。【鎌田直秀】