福井工大が1年生投手の頑張りで、難敵を撃破した。先発の立石健投手(1年=大体大浪商)が7回2失点で勝利に導いた。

大阪桐蔭の快進撃に沸いた昨夏の大阪高校球界で、屈指の実力を誇った右腕だ。先発2番手としてリーグ戦で見せた投球内容と、大舞台でも動じない強心臓が買われ、全国大会の初戦の先発を託された。

初回はやや制球を乱したが、その後は切れのいい速球と、縦に鋭く落ちるチェンジアップを武器に上武大打線を打ち取った。「緊張はしていたけど、東京ドームなので楽しくて。今日はチェンジアップがよかったです」と屈託なく笑った。下野博樹監督(59)は「うちの実質のエースですから。期待通りの投球でした」と喜んだ。

立石は昨夏は南大阪大会で近大付に2-4で敗れ、準決勝敗退。大学4年間での成長を自らに課した。福井工大ではOBで大洋(現DeNA)ドラフト1位の水尾嘉孝氏(51)がちょうど今春から投手コーチに就任。これまでは月に1度の指導だったが、イタリアン・レストランの経営を一時やめ、本格的に投手スタッフの指導陣に入った。

水尾コーチは頭が突っ込むくせがあった立石のフォームをすぐに矯正し、腕を前で振るよう指導。大学入学後に最速を5キロアップの147キロに伸ばし、制球も安定した。伸び盛りの1年生はリーグ戦最終節で初めて第1戦を任され「エース」への階段を急ピッチで駆け上がった。先発を監督に進言した水尾コーチは「ここ一番という試合では誰が見ても立石」という信頼感で送り出した。

立石には秘めた野望がある。同年代には根尾昂(中日)藤原恭大(ロッテ)ら大阪桐蔭勢をはじめ、夏の甲子園100回大会を盛り上げたライバルが多くいる。「彼らが騒がれているのを見ると、4年後は自分がいったろうと思う。直球で空振りが取れる投手になりたい。世代NO・1と呼ばれるようになって、プロに行きたいです」。

上武大には2年前、3年前とともに延長タイブレークで敗れていた。11年目の指揮を執る下野監督は地方大学の強豪として強く意識する存在だったといい「感無量です」と言葉に力を込めた。12日の2回戦は明大とぶつかる。立石は「初めての全国大会で不安もあったけど、これを自信にしたい。(明大は)6大学なので楽しみです」と大物食いに意欲を見せた。