千葉・白井市で行われた元中日監督の谷繁元信氏(48=日刊スポーツ評論家)による野球教室は打撃指導に移りました。子供たちもやっぱりバッティングは大好き。目の輝きが違いました。

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「バットを持つとみんなニコニコするなあ」。谷繁氏が苦笑いするほど、打撃指導に移ると子供たちの目が輝いた。

(1)軸足

キャッチボールの時と同じように、谷繁氏はここでも地面に線を引くように指示した。投手に向かってまっすぐ線を引かせ、その線に垂直のラインを引く。交わったところに右打者なら右足、左打者なら左足、軸足を置かせた。

「素振りをする時には必ず、向こうにピッチャーがいると想定してやること。体の向きもまっすぐ、特に軸足はピッチャーに対してまっすぐ置こう」

(2)下半身で打つ

強く打つ、遠くに飛ばすためには下半身の力が最も重要。では、どこに力をためるかというと「股関節、内転筋」と指摘した。

「軸足の内側のユニホームにしわが寄るイメージ。できれば両足の内転筋にぐっと力を入れて欲しい。タイミングを取った時や足を広げた時に下半身の力が逃げないように」

(3)軸足で立つ

谷繁氏は子供たちに「よし、足を上げて10秒止まれ」と指示を出した。1本足打法の格好でしばらく我慢する。ぐらついたり、軸足の外側に体重がかかったり、10秒はなかなかつらい。そこに谷繁氏の声が飛ぶ。「ベルトのラインはまっすぐに保つ! ピッチャー寄りの腰が上がったらだめ。打ちにいく時に下がってしまうぞ!」

(4)軸足で粘る

次に、1本足の格好から上げた足をゆっくり出していく。軸足でしっかり立っていないとすぐに上げた足が地面に着いてしまう。「上げた足と一緒に体が前に出ないように軸足で粘る。体のラインはピッチャーに向かって真っすぐ!」

(5)トップの作り方

トップとはバットを振り出していく直前の腕の形。まっすぐ後方に引いていくのが一般的だが、なかにはスムーズに引けない子供も多い。そこで谷繁氏は巨人丸と坂本勇を引き合いに出した。

「巨人の丸はヒッチ(手を下げる動き)してからトップをつくる。左バッターは結構こういうタイプが多い。逆に坂本は構えた時からトップをつくっている。うまくトップを作れない時は試してみてください」

(6)レベルスイング

ここまでを頭に入れて「さあ、振ってみよう。バットは寝てもだめだし、大根切りもだめ。軌道はレベルが一番いい。ボールに当たる接点が一番広い」

(7)下半身で打つドリル

バットを股にはさみ、バットを落とさないようにスイングの動作を行う。

休みなしの打撃指導に、子供たちの息が上がってきた。谷繁氏は子供たちを集め、訓示した。

「ちょっと時間がたつとみんな言われた事を忘れている。集中力が大事。軽く200本素振りするより、真剣に50回振る方が身に付くんだ」

最後は全員で、掛け声に合わせて50スイング。走塁から始まった技術指導は終了した。

「野球は楽しくやるもの。でも、一番楽しいのは、試合に勝つ、いいプレーをした、いいヒットを打てた時です。そのために練習がある。練習はしんどいけど、ちょっと頑張ってみれば、野球はもっともっと楽しくなります」

明るく、厳しく。その先に楽しさがある。(終わり)

◆谷繁元信(たにしげ・もとのぶ)1970年(昭45)12月21日、広島県生まれ。江の川(現石見智翠館)では、87、88年夏の甲子園に出場。8強入りした88年は、島根大会全5試合で計7本塁打を放った。同年ドラフト1位で大洋(現DeNA)入団。98年の日本一に貢献し、01年オフにFAで中日移籍。中日ではリーグ優勝4度、07年日本一。13年に捕手として3人目となる通算2000安打を達成。14年から選手兼任監督となり、15年に引退するまでプロ野球記録の3021試合に出場。16年に監督専任となった。プロ通算2108安打、229本塁打、1040打点、打率2割4分。現役時代は176センチ、81キロ。右投げ右打ち。