「カナノウ旋風」から1年。4年連続6度目出場のゴールデンリバース(東北・秋田)の金足農(秋田)甲子園準優勝メンバー3人が、社会人全国デビューを果たし、厳しい洗礼を浴びた。

「2番二塁」で先発出場した斎藤璃玖内野手(18)、「9番左翼」大友朝陽外野手(19)は、ともに無安打。8回裏には2人の連続失策でダメ押し点も献上した。代打出場の菊地亮太捕手(18)も空振り三振。千曲川硬式野球クラブ(北信越・長野)に0-4で敗れて3年連続初戦突破には貢献できなかったが、貴重な経験を生かして日本一に挑む決意を固めた。

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ホロ苦どころか、激辛の全国舞台再出発だった。1回表無死1塁。昨夏、近江(滋賀)との準々決勝で逆転サヨナラ2ランスクイズを決めた斎藤に、バントのサイン。「変な自信があったので、それが隙になってしまった」。高校時代から積み重ねてきたバントを2度も失敗。追い込まれての強攻策で中飛。流れを止めてしまった第1歩だった。

大垣日大(岐阜)との2回戦で本塁打を放った大友は、2回2死二、三塁で第1打席に立った。相手投手の140キロ超直球に、2度のスイングは空振り、ファウル。「高校トップクラスに比べても甘い球が少ない。同じ140キロでもキレが違う」。四球を選んだが、甲子園では感じなかったレベルの差を体感した。

朝5時に家を出て、午後10時近くに帰宅する高校時代に比べれば、勤務生活は体力的には余裕がある。週1回の全体練習以外にも、集まれる人数で自主トレを実施してきたが、足りないことも分かった。「甲子園準優勝で目立つ部分もあったので、クラブチームでも結果を出そうと練習してきたが、量が違うので試合で対応できない部分もあった」と痛感。1年目から定位置を奪ってチームを活性化させてきたが、全国舞台の壁は厚かった。経験はプラスに転じさせるつもりだ。

吉田輝星投手(現日本ハム)の剛速球を受け続けてきた菊地も、9回の好機に代打起用されたが空振り三振に終わった。現在は秋田県庁に勤め、農業施設の維持管理を担当。「仕事も忙しいけれど、同級生もみんな頑張っているので刺激になっています」。カナノウナインの切磋琢磨(せっさたくま)は継続中だ。

序盤の2被弾後は粘って失点を封じてきたが、0-3の8回2死走者なしから斎藤がトンネル。大友も落球。2人のミスで与えた痛恨の1点は、大きな宿題となった。大友は「甲子園は1回しかなかったけれど、この大会はこれからもある。甲子園の決勝では(大阪桐蔭に)ボコボコにされましたし、もっと打撃を磨いて数年のうちに日本一になりたい。自分たちの頑張りも、少しでも吉田の耳に伝われば良いと思います」。チーム40人中、3人を含めて10人が金足農出身。それぞれの道で、まだまだ「カナノウ」の名をとどろかせる。【鎌田直秀】