フランスに“サムライ”がやって来た。パリ市内から北西部に車を約2時間走らせたところにあるルーアンで、8月28日に「第3回フランス国際野球大会 吉田チャレンジ」が開幕。日本からは「侍ジャパン社会人代表」が参加している。10月アジア野球選手権大会(台湾)に向けたチーム強化の一環とし、フランス代表と各地で5試合を行うことになっている。

ノルマンディー地方にあるルーアンの街並みは、巨匠クロード・モネが題材にして描いたほど、インスタ映えする景色。百年戦争で捕虜になったジャンヌ・ダルクが火刑に処された地として知られ、歴史の奥深さが都市の美しさを際立たせた。

そのルーアンで行われた初戦は日本が15対2で7回コールド勝ちを収めたが4回まではリードされる展開だった。5回に押し出し四球、敵失で逆転に成功し、結局はチーム11安打15点で突き放した。

フランス野球について石井章夫監督(54)は「打つほうはパワーもあるし、二遊間の守備も上手だった」とし「うちはミスも目立ったし立ち遅れていた」と引き締めた。

そもそも今大会は90年(平2)から7シーズン、仏ナショナルチーム監督を務めた吉田義男氏(86)に敬意を表し、同氏の名を冠して開催されてきた。

14年の第1回大会は、五輪から除外されていた野球ソフトボールの復活をうたって、都市対抗大会で優勝した西濃運輸を含む4カ国が競い合った。

当時はオランダが優勝し、フランスが準優勝で欧州での浸透ぶりをうかがわせた。16年の第2回大会でもオランダが連覇した。

東京五輪で再び野球ソフトボールは消滅、24年パリ大会で実施されることはない。早くて28年ロサンゼルス五輪での復帰を探ることになっている。

日本野球連盟・筒井崇護副会長(61)は環境がすべて整っているわけではない野球発展途上国での今大会にあえて参加することにも触れた。

「パリ五輪で野球がなくなったからチームを派遣しないというのでなく、逆に欧州で日本の野球を見てもらう必要があると思った。ロサンゼルス五輪で復活する保証はないわけで、我々は何らかの動きを起こしていかなければいけない」

初戦ではフランス野球育ての親として、吉田氏が始球式を務めた。フランスの大敗には「投手力アップに磨きをかけてほしい」と厳しかった。

「五輪は1日にして成らず、だ。プロ、アマ関係なく野球人は1つになるべきです」と指摘した。

【寺尾博和編集委員】