逆転CS進出を目指す阪神に前代未聞の「背信劇」だ。ヤンハービス・ソラーテ内野手(32)が6日、広島戦(マツダスタジアム)からの1軍昇格方針を自ら拒否した。

球場で矢野燿大監督(50)と話し「モチベーションが上がらない」と直訴。グラウンドに姿を見せず、帰阪した。貧打を解消すべく7月に獲得。4本塁打、打率1割台にとどまり、8月下旬から2軍調整中だった。大事な3連戦に水を差す格好になり、チームも完敗。3位広島と3・5ゲーム差に広がった。

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逆転でクライマックスシリーズ進出を目指す戦場から、1軍招集するはずだったソラーテが自ら背を向けた。広島戦の試合前練習。明らかな異変が起こっていた。ユニホーム姿で球場入りしたソラーテがグラウンドに現れない。矢野監督も長時間、ベンチ裏から出てこない…。結局ソラーテは1度も姿を見せず、出場選手登録も見送られていた。

広報が衝撃の発表を行ったのは練習後だ。2軍から呼び寄せても1軍昇格しなかった理由を「本人の方からモチベーションが上がらないとのことで帰阪させました」と説明。報道陣からも失笑が漏れた。練習中に矢野監督と話したが、チーム方針を受け入れない背信行為で、帰阪となった。

メジャー通算75本塁打のソラーテは貧打解消の起爆剤と期待され、7月に新加入した。7月下旬の1軍合流当初こそ猛打を振るったが、拙守連発でリズムが狂い、20試合出場で打率1割8分8厘、4本塁打。8月19日に出場選手登録を抹消されていた。2軍では9月4日オリックス戦まで5試合連続安打中。3日同カードで本塁打を放つなど調子が上向いていた。この日から3位広島との直接対決。攻撃力アップをもくろんで俊介を降格させ、S砲に期待したが、寝耳に水の1軍拒否…。思惑は外れた。

前日5日DeNA戦(横浜)の試合後に再昇格が決定。この日の午前中、鳴尾浜に荷物を取りに行き、広島入りしたが、関西へとんぼ返り。先発でなかったのが不幸中の幸いだ。2軍降格後は「もう1軍には上がれないから」と傷心ぶりを口にしていたという。大リーグで昨季まで5年連続2桁本塁打の実力者のプライドが許さなかったのか。

矢野監督は「球団に聞いて」と多くを語らず。谷本球団副社長兼球団本部長も「大事なところでベンチに入れる感じではなかったという判断。不細工は不細工ですけど、しょうがない。残念は残念」と話した。ペナルティーも検討するという。7日から2軍に合流方向だが不透明だ。

大勝負を前に拍子抜けしてしまうドタバタが尾を引き、3位広島に完敗。俊介の出場選手登録を抹消し、ベンチ入りが通常より1人足りない状態で戦ったが、3・5ゲーム差に広がった。闘志なき者が浮き彫りになり、むなしい夜になった。【酒井俊作】