ともに歩んできた18年間の西武人生で、初のリーグ連覇を成し遂げた。中村剛也内野手(36)と栗山巧外野手(36)。今季、中村は通算400本塁打を達成し、栗山は球団最多安打記録を更新。球団史に名を刻んだシーズンを、同期2人はどのように迎え、互いをどう見つめてきたのか。そして、それぞれが選ぶMVPとは。昨季の10年ぶり優勝対談から1年。酸いも甘いも知る36歳コンビが、再び語り合った。【取材・構成=栗田成芳】
◇ ◇ ◇
在籍18年で5度目、主力として活躍してからは3度目のリーグ優勝。今、チーム内で日本シリーズを知る生え抜き選手はこの2人だけとなった。そんな2人がまず選ぶ、陰のMVPは。
栗山 打線はすごい。相乗効果があって選べないけど、後ろを締めた増田だと思う。あの安心感はなかなかない。グラマン(08年日本一の胴上げ投手)以来ちゃうか? 年間通しての安心感は。
中村 俺は源田だな。あの守備。何本ヒットを捕っているか。ピッチャーも助かっていると思う。
栗山 1年目からすごいな。
中村 安定してすごい。
では、真のMVPは?
中村 森。しっかり打撃で結果残す。ピッチャーを引っ張る気持ちも出てきている、多分だけど。そう考えると森。
栗山 おかわり(中村)もすごかったしな~。
中村 (うれしそうに)おぉ~。
栗山 山川もすごかった。でも(森)友哉が3番入って、ここでってところで打ち始めてから勢いついた。森のつなぎがないと、サンペー(中村)の満塁も回ってこない。ポイントゲッターにも、つなぎにもなったのはすごかった。キャンプの時からあれだけの金髪で来るくらいだから。相当の自信と「ここが勝負や、俺の年」っていうのあったんでしょう。
中村 そうやね。
栗山 今、振り返るとね。保険を全くかけていない。周りに何を言われようが「今年は俺」。最終盤で磨きがかかってきた。優勝逃したら「森がチャラチャラしてたからや」って言われることを受け入れる覚悟だった。
中村 そこまで考えてないやろ!
栗山 いや、キャッチャーやから。そこまで読んでる可能性ある。
中村 ヘルメットかぶってるし、見えへんし、ってな。
後輩の活躍をたたえながらも、勝負のシーズン終盤の4番と5番は、このコンビが務めた。そんな2人は2連覇を目指す今季をどんな心持ちで迎えたのか。
栗山 (菊池)雄星、浅村、(炭谷)銀仁朗がいなくなったけど、キャンプの空気に悲壮感みたいのは案外なかった。これはこれでいけるんちゃうんかなって。
中村 (流出は)慣れてるというかな。
栗山 開幕は俺が7番でサンペー8番。打つようなってから4番5番もあった。サンペー、すごいな! 8番からの大昇格!
中村 開幕前、その8番が…俺なんて言ってたっけ?
栗山 「別にええけど、アカン」って。(2人爆笑)
中村 そんなに気にしていない。でも試合出てやるんやったら、ちょっと頑張ってもうちょっと上を打ったろうって思ってた。
今季は中村が史上20人目の400本塁打を達成。残り15本で今季を迎え、苦しみながらも7月19日に到達した。ただ2人は冷静に大記録を受け止める。
中村 僕は400本が大記録と思っていない。目標としてはあったけど…。
栗山 すごいとは思う。けど、あるとしたら500本ちゃうんかなって思っていた。400本打った場面(サヨナラ)がすごかったけど、1つの目標にするならね。だってお前、(打った試合後に)記念撮影やってたやろ? 「これは500本でやるべきちゃうかな」って思った。ペース的にいったらあと2、3年で500本いく。もう1回記念撮影やんのか?
中村 だから、球団的には500本打たれへんって思われてるんやろ。(2人爆笑)
栗山 おかわりを代弁するなら、400は大記録ではあるけど通過点。あくまで500本以降が目指しているところ。でも記念撮影やっちゃったからな。500の時はバックスクリーンの前でやるか?
中村 もう全員集合で撮るんじゃない? でもそこまで考えていない。
栗山 いや、そんなことない。400は絶対届く数字。やれば届く。500は分からない数字。はい、代弁しました。
中村 あと80本くらいか…。2年でできたら最高。でもそんなうまいこといかない。とりあえず目標は450。
軽妙な掛け合いは18年間の時間がなせるものなのか。つかず離れずの関係に「水と油」と表現するコンビを、数字が物語る。栗山の誕生日の今年9月3日、中村が同日通算6本目のバースデーお祝い弾を放った。一方で、中村の誕生日8月15日の栗山の通算打率はというと、1割5分1厘。
栗山 えー、まじっすか!? 1割5分か~。
中村 俺はけっこう打ってるのにね。
栗山 いや、サンペーの誕生日は疲れている真っ最中。9月3日は疲れが抜けている。そういうことやろ。
中村 確かに相当動きやすい。動けば汗出るし、普通にしていたら気持ちええ。
チーム野手最年長の2人。ともに離脱なく今季のチームを支えたが、疲れがないはずない。調整方法も変わったのか。
中村 俺はそんな考えてない。
栗山 いや、サンペーは極端に手を抜き始めた。手を抜くって表現はあれやけど、練習やるところはやって、しないところはしない。ていうか、よりしない。良く言うとメリハリ、悪く言うと手抜きに磨きがかかってきたな。
中村 最近、ノック受けてないからな。
栗山 ある種の工夫と勇気やな。
中村 そうやな。そこは勇気。最初は守備練習しないでエラーしたらどうしようって思ったけど。もう飛び越えました。突き抜けました。飛び越えると何も思わんくなった。(2人爆笑)
試合前も黙々とバットを振り続ける栗山と、マイペース調整の中村。対照的なキャラクターでいて、ナイスガイの2人。昨季優勝時も話題になった「同期入団かつ同学年で、入団した球団に最も長く在籍したコンビのプロ野球最長記録(※)」まであと3年。しかし、1年間戦い抜く難しさを知るからこそ、容易に宣言はしない。
栗山 んー。んー。可能性は…。んー。
中村 可能性はあるな。
栗山 可能性は…。
中村 ある。
栗山 夢は膨らむ。でも3年は長いからなー。
中村 長いな。
栗山 でも夢はあるな。
まずは1年。その先に3連覇。対談第3弾も実現する、かもしれない。
※最長は巨人槙原寛己と村田真一(82~01年)、ロッテ福浦和也と小野晋吾(94~13年)の20年。