奇跡への扉が開いた。広島が中日とのシーズン最終戦に敗れ、阪神の自力CSが復活した。逆転CSには残り3試合の全勝が必須条件だが、広島が勝てば終戦だった夜を乗り越え、流れは阪神にきた。矢野燿大監督(50)は、今季限りで退団する鳥谷敬内野手(38)と1日でも長く一緒にプレーするために、3戦全勝でのCS進出を誓った。

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自分たちではどうすることもできない長い夜を乗り越えた。ナイターで広島が中日に敗戦。広島が勝てば阪神のBクラスが確定した分岐点で運も味方につけ、自力CSが復活した。残り3試合に全勝すればCSに行ける。1敗もできない崖っぷちとはいえ、流れは阪神に向いた。28日のDeNA戦に備えて横浜入りしていたナインも、より気持ちを高ぶらせたに違いない。

広島の敗戦が決まる7時間前。甲子園で練習を見守った矢野監督も、残り3試合の必勝法を思い描いていた。「打って、ピシャッと抑えて勝ちたいのはあるけど、ある意味、うちらしく苦しみながらでも、1点をもぎ取って投手で守っていく試合ができたら」。泥臭く勝つ。総動員で勝つ。矢野流の全勝宣言だった。

秋空の下で特別な感情もわき上がる。16年間、生え抜きスターとして猛虎を支えた鳥谷が、今季限りでチームを去る。鳥谷と1日でも長く。ナインが抱くその感情は指揮官も同じだ。「やっぱりそういう思いも十分に含まれているというか、みんなそういう思いで戦っている。みんなそういう思いではある」。

05年には岡田監督のもと、ともにレギュラーとしてリーグ優勝を経験。今季から監督と選手の関係になったが、阪神のユニホームで最多安打を積み上げた実力者が、チームのために身を粉にする姿を間近で見てきた。背番号1がタイガースを去る日は確実に近づいている。だがCS進出なら期間は延びる。さらに勝ち上がれば、日本シリーズで甲子園に立つ夢もふくらむ。

奇跡は難敵攻略から始まる。28日DeNA戦の相手先発は今季13勝左腕の今永。対戦3試合で1勝1敗、防御率1・96と苦しんでいる。だからこそ指揮官は力を込める。「より全員の力で戦っていかないと、今永も苦しめにくいだろうし、横浜に勝つのも簡単な部分ではなくなっていく。ピッチャーも野手も全員で、つなげてやっていく」。あと3試合。鳥谷とともにミラクルを起こす。【桝井聡】

▼阪神は自力でのCS進出の可能性が復活した。27日広島が敗れ、70勝70敗3分けの勝率5割で全日程終了。阪神は残り3試合に○○○なら69勝68敗6分けで5割4厘となり、広島を抜いて3位が決まる。なお阪神○○△のときは68勝68敗7分けで勝率5割となり、広島と同率に。この場合はセ・リーグの規定により勝利数の多い広島が3位、阪神は4位となる。