敵地福岡で次々と花火を打ち上げ、下克上の幕が開けた。楽天が、オコエ瑠偉外野手(22)のクライマックスシリーズ初アーチとなる1号ソロなどソフトバンク千賀に4本塁打を浴びせる逆転劇でファーストステージ突破に王手をかけた。主砲浅村栄斗内野手(28)も先制&同点と価値あるマルチ弾で3打点。勢いのまま、リーグ王者西武への挑戦権をつかみにいく。

オコエはまさに腹をくくっていた。勝ち越しを許した直後の第1打席、狙いは初回に159キロを出していた千賀の直球1本。「最初の真っすぐだけは逃したくない。“クソボール”じゃない限り、いこう」。初球の内寄り高め151キロにバットをかぶせ、強引に振り切る悪球打ち。両軍合わせて6発の空中戦にあって、ただ1人スタンドまで運び「インコースに来てくれないかなと思っていた。読み勝ちッス。右手で押し込みました」とドヤ顔を決めた。

今季は初の開幕スタメンも、不振で6月に登録を抹消された。1年間1軍にい続けるというシーズン前の誓いを果たせなかった自分に腹が立った。遠征で新幹線を利用した時、立ち位置を再確認した。「2軍って、1軍登録が2年を超えている選手は新幹線代が球団持ちになるんです」。高卒4年目ながら、オコエも該当。責任を自覚した。「自分が1軍にい続けるには、レギュラーになるしかない」。インパクト時に曲がっていた左肘を真っすぐ伸ばし、打撃を改良。8月の2軍戦でサイクル安打を達成するなど一気に状態を上げ、シーズン佳境の9月に1軍へ戻ってきた。

チームが土壇場でCSを決めた9月24日のソフトバンク戦でも先発起用。千賀からヒットを放ったことが、CS初戦のスタメン抜てきにつながっている。その試合、1点を追う4回1死一塁では送りバントで走者を進め、9番オコエのバットに託す場面があった。「平石さんには、日ごろから本当に期待をかけてもらっている。応えなきゃいけない」と繰り返す。2軍監督時代から目をかけてくれた指揮官との絆が生んだ一打。恩返しの下克上が始まった。【亀山泰宏】