雨を裂いた。阪神が、DeNAを競り落としてクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージを突破した。同点の8回、梅野が犠飛を放って勝ち越すと藤川球児投手(39)が登板。雨脚が強まる中で集中を切らさず、2回を無失点に封じて逃げ切った。ペナントレース最終盤に6連勝でAクラス入りを決めた勢いを、短期決戦で遺憾なく発揮。5年ぶりに進出するCSファイナルステージ(9日開幕、東京ドーム)で巨人と対戦する。

懸命につないだバトンを、藤川が受け取った。「最後まで雨が降っていたけど、ずぶぬれになりながら、たくさんのファンが『今日で野球が終わってほしくない』と思っていたと思う」。どしゃぶりの雨。ぬかるんで滑るマウンド。あの時の光景がよぎる。17年のCSファーストステージ第2戦。甲子園での一戦は、泥にまみれた乱打戦の末に敗れた。

青の敵地で悔しさを晴らすときが来た。9回2死一塁。打席は、前日サヨナラ本塁打を放った乙坂。フォークボールで詰まらせると、打球は藤川の前に転がった。ゲームセットの歓声の中で、ぐっと力強く拳を握った。

執念継投の最後を締めた。1点リードの8回から登板。6月9日の日本ハム戦(甲子園)以来、2度目の回またぎで燃えた。最もプレッシャーのかかった2イニング。矢野監督は1-0の時点で、藤川に委ねることを決めていた。1-1になっても藤川。矢野監督は「うちは同点でもだめなんで。球児には申し訳ないけど、行ききるというか。それぐらいの信頼がもちろん、間違いなくある」と強調した。

レギュラーシーズン中、リリーフが打たれても、四球を出しても、矢野監督は何も言わなかった。「とがめないというか、全くなかった。ピッチャーがマウンド上で、100%の力を出していいということになる。これはすごいこと」。藤川は、矢野監督と投手陣の確かな信頼関係を感じ取っていた。

「守るものがないのが強い。監督の采配を見ても、攻める気持ちで行けています」。絆が作ったリーグトップの安定感は揺るがない。宿敵巨人が相手でも最後まで守り抜く。【磯綾乃】