ソフトバンクが2年連続2位からの日本シリーズへ、3連勝で王手をかけた。クライマックスシリーズ・ファイナルステージ第3戦で千賀滉大投手(26)が西武打線を8回2安打無失点。10奪三振と完璧に抑え込んだ。シーズン終盤は勝てずにいたエースが完全復活し、西武との対戦成績は3勝1敗(1位アドバンテージ含む)。12日は台風のため中止となり、13日の第4戦を4連勝で締め、一気に突破する。

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千賀の8回、126球が、疲労困憊(こんぱい)のチームを救った。「今日は負けても8回を1人で投げよう。モイネロ、森さんを休ませたいと思ってマウンドへ上がった」。ファーストステージから全5戦を投げているモイネロ、4戦連続登板の森、中継ぎ陣を休ませた。

1点の援護をもらった初回、いきなり秋山に打たれたが「秋山さんなんで1本くらい打たれたって何ともない。すぐに5点、6点取られる打線。ずっと集中を続けた」と油断することなくゼロを重ねた。序盤、球数が多くなったが、4回には外崎から3者連続直球で空振り三振。8回の森には148キロのカットボールで空振り三振と計10個の三振を奪った。

9月24日楽天戦で敗戦投手となり、V逸。CSファーストステージ第1戦では、今季最多の4被弾でチームを黒星発進させた。「取り返すとかそういうのはない。終わったことなので、今日のことを考えた」と、悔しい思いは過去に置き、リリーフ陣を休ませることを一番に考えた。

5日の敗戦後、倉野投手コーチからフォームの修正ポイントを告げられ、中5日で矯正した。倉野投手コーチは「修正能力が高い」と改めて驚いた。9月6日ロッテ戦でノーヒットノーランを達成するなどシーズン終盤に安定したのも、3軍、育成時代から見続けてきた倉野投手コーチが配球面と精神面の2つで助言したことがヒントとなった。

ファイナルステージ初戦に負ければ中4日で2戦目の先発も工藤監督は考えていたが、チームの勝利で中5日で万全を期した。工藤監督も「本当に見事な投球だった。気合が入っていつもより低めに意識をしていた」とほめた。後藤球団社長は「志の高さを感じる投球だった。自分が目指すべきレベルがすごい」と目を細めた。今春のキャンプ前に千賀からメジャー挑戦への熱い思いを聞き、この1年での成長に舌を巻いた。

エースの快投で、日本シリーズ出場へ王手をかけた。千賀は「僕は陰で応援してます」と笑った。台風19号のため12日は中止となり、さらに休養十分な投手陣と好調な打撃陣で、第4戦で日本一へのキップをつかむ。【石橋隆雄】

▼ソフトバンクが毎回の14安打。今年1S<2>戦の楽天戦でプレーオフ、CS史上初の毎回安打を記録したばかりだが、またも達成した。西武とのCSで挙げた得点は昨年5試合が10→5→15→8→6。今年の3試合は8→8→7。昨年から通算8試合で計67点を挙げている(1試合平均8・4点)。

▼ソフトバンクは楽天との1S<2>戦から5連勝。プレーオフ、CSで5連勝は07年中日、14年阪神に並ぶ最長。パでは初めて。

▼千賀が10奪三振。プレーオフ、CSでの2桁奪三振は17年ファイナルS第3戦の則本昂(楽天)以来13度目。千賀は16年1S第1戦でロッテから記録して以来だが、2度マークしたのは松坂(西武)ダルビッシュ(日本ハム)則本昂に次いで4人目。

▼中村晃が1回に先制の適時安打を放ち、<2>戦に続いてV打点。同一シーズンのプレーオフ、CSで2試合連続勝利打点は82年第1、第2戦大田(西武)15年ファイナルS第1~3戦内川(ソフトバンク)16年ファイナルS第1、2戦丸(広島)17年ファイナルS第3、4戦中村晃(ソフトバンク)18年ファイナルS第4、5戦の柳田(ソフトバンク)に次いで6度目。1人で2度は初めて。