侍ジャパンも「ONE TEAM」に-。野球日本代表が11月のプレミア12に向けて21日、合宿地の宮崎に集結した。稲葉篤紀監督(48)はインタビューに応じ、自国開催ワールドカップ(W杯)で史上初の8強を遂げたラグビー日本代表に、来年東京オリンピック(五輪)を控える侍ジャパンの未来像を重ねた。【取材・構成=広重竜太郎】

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“戦友”の勇姿に心揺さぶられている。五輪1年前に対談した中田久美監督率いる女子バレーのW杯、初めてW杯8勝を挙げた男子バレー。そして稲葉監督はラグビー日本代表の快進撃に魂を熱くした。「日の丸をつけたスポーツを見て共感するのは、スポーツの持つ力は大きいということ。日本を少しでも元気にするという意味で各競技が切磋琢磨(せっさたくま)しながらやっていく。野球も負けてられない。いい刺激を受けている」と純粋に受け止めた。

東京五輪とW杯日本大会。野球とラグビーにおける日本の世界的位置付けは違うが、自国開催で必勝を期待される重圧は共通だ。

「いろんな思いで臨み、努力が花開き、力以上のものを出す。自国開催でプレッシャーもある中ですごいこと。これだけ歓声があると頑張りすぎる、少し硬くなる部分もあるが、まったく感じさせない。アイルランド戦でも逆転勝ちしたが、それだけ実力を持っているということ」

侍ジャパンもスピードで世界を驚かせる。ラグビーは松島、福岡のフェラーリ級WTBで世界の猛者をちぎった。「これまでの代表でもスピードある選手が塁に出ると、投手が警戒し、外国人選手がイライラする姿をよく見た。平常心じゃなくさせるのは、実はそこでも攻撃をしている」。昨年の日米野球でも6試合で7盗塁。盗塁阻止率メジャー通算4割2厘を誇る強肩モリーナからも4盗塁を決め、重圧をかけ続けた。

スピード野球を体現する唯一無二の日本刀も携えた。日本シリーズで巨人をかく乱するソフトバンク周東だ。「これまでスペシャリストは鈴木尚広ぐらいだった。昨年11月(U23W杯)ぐらいから当時は育成だったが、間違いなく足のスペシャリストになるだろうと感じ、見事にこの1年でそれをやった。日本シリーズ2戦を見ても使いどころが試合を大きく左右している。どこで使うか大事なポイントになる」。指揮官の感性が周東選出に凝縮されている。

スピードに波状攻撃も重ねる。指揮官は打線で5番をキーに掲げる。「1、2番が出塁して3、4番でかえす。だが、かえせなかった時の5番は、ここで打つと点が入るし、大量点につながる。確実性のある選手を置いた方が機能するのかなという思いはある。吉田正もその中の1人だし、近藤もバットコントロール、選球眼がいい」。タックルを受けながらもパスを回す“オフロードパス”は象徴的だったが、侍ジャパンも連続攻撃を仕掛ける。

11月2日からプレミア12が幕を開け、日本は同5日に初戦ベネズエラ戦を迎える。祭典の熱を楕円(だえん)球から白球が受け継ぐ。「挑戦することは大事で、今回は我々は挑戦者。挑戦者として後を向くのではなく前へ前へというのはラグビーと同じ。偶然、そこには後退ということもあるが、後退をしながらでも、どうやって前へ進めるか。チームとしても私自身の采配もそうだし、いろんな覚悟をもってやっていく」。五輪の前哨戦で、世界一へ1つになる。