侍の系譜にしっかりと名を刻んだ。4番鈴木誠也外野手(25)が4回、左越えソロを放った。主要国際大会では初となる4番の3試合連続アーチを記録し、チームをけん引した。

打線を組み替え、丸を1番に起用した試合。鈴木を中心に“一丸”で勝利をもぎとった。

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もうスイッチを切った後だったのだろう。試合終了直後の会見場。4番鈴木は「質問内容を忘れちゃいました」と照れて、報道陣を笑わせた。日本語での問いかけが英語、スペイン語に訳されていく。タイムラグが生まれる間に質問が飛んだ。「もう1度いいですか?」。ゲームで集中力を使い果たした証しだった。

たった1球で流れを引き戻した。2点を追う4回2死。打線が打ちあぐねていた変則右腕ルジッチの初球スライダーを狙い澄ました。「なかなか日本の攻撃が動かなかった。塁に出たいと思っていて、たまたま最高の結果になった。チームも盛り上がって良かった」。文句なし。今大会3号ソロを左中間中段席まで届かせ、反撃ムードを高めた。

10月下旬の宮崎合宿中、吉田正尚からバットを借りて感触に納得した。すぐさまアシックス社の担当者に同型を注文し、台湾1次ラウンド3戦はポッキーカラーの新相棒で2本塁打9打点。「バットは特に。気分です」と多くは語らなかったが、この日は新相棒をさらに改良させた白色バットで3発目を決めた。

メリハリの効いた心も武器の1つだ。「集中力がないので使い分けないと持たないんです」。本人はかつて自虐的にそう表現したこともあるが、その分、一瞬一瞬にかける集中力は他の追随を許さない。スイッチを入れるタイミングは「打席に入る時と、投手が投げる瞬間の守備ぐらい」。オンオフを切り替えられるから、勝負どころに強い。

これで1次ラウンドから3戦連発、4戦連続打点。ともにプロが参加した主要国際大会の日本代表4番としては史上初の快挙達成となった。「4番で使ってもらっている以上はいい結果を出したい。国との対決になるので、負けたくない気持ちが強い。一番はチームメートの皆さんが、いい場面で回してくれる。集中してモチベーション高く打席に立てているのが、いい結果になっていると思う」。3本塁打、10打点は12カ国トップ。歴史をあっさり塗り替えた4番。誰も止められそうにない。【佐井陽介】