日本が初優勝を飾り、09年WBC以来10年ぶりとなる世界一となった。15年の第1回大会の準決勝で9回に逆転されて敗れ、優勝をさらわれた宿敵韓国を下した。

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10年ぶりの世界一に挑んだ戦いを、東京五輪を前に体感したのは掛け値なしの機会だった。一方で透けて見える課題もある。

五輪の前哨戦での好成績は選手のハートに下支えされた。秋山はメジャー挑戦を決心していたが、招集に応じた。国際大会での成績は、今後のメジャー球団との交渉に影響を及ぼす可能性もある。さらに大会直前に負傷離脱した。「行ったことに後悔なんてまったくない。デメリットなんて百も承知。メリットに目を向けるべき。侍ジャパンというのはそういう場所」。むき出しの覚悟だった。

秋山に代わり、丸が追加招集に応えた。巨人の主力で、あと3日で秋季練習を終え、オフに入るタイミングだった。代表に行けば正中堅手の座が待つ。シーズンを終え、1度は切っていた心のスイッチを再び押し、はせ参じた。

29人はリスクを負った。だが参戦しなかった選手もいる。予備登録60人に入りながら最終28人を選考する段階になり、実現しなかった選手が数人いる。故障など正当な理由があるケースもあったが、不明瞭な内々の辞退もあった。もちろん日本代表が野球人生のすべてではない。何に重きを置くかは個人に委ねられていい。だが大前提として予備登録前に意向を示すことはできた。祭典に向けて代表と選手、双方の食い違いが生まれない、慎重な意思確認も必要になる。

グラウンド上も困難な戦いになる。戦術はより限定される。スペシャリスト周東の俊足でSRオーストラリア戦は逆転勝利したが、五輪のメンバーは28人から24人に縮小。金子ヘッドは大会中に「取り合いになって最後の1点を周東で取りに行くなら形になる野球だけど、しのいで、しのいで最後に周東だったら、本当に強いとは言えない」と起用の難しさを実感した。

短期決戦で選手の好不調を修正しにくい中で、代走が主な選手に1枠を与える余力があるかは不透明だ。レギュラー格の不測の状態に備えて、それに近いレベルの選手を入れれば野手枠は上限いっぱい近くになる。今大会で五輪出場権を得られなかった米国のように、五輪本番を想定したかのようにスタメンをほぼ固定して戦った国もある。日本は五輪を見据えた準備は進行しつつも、ぶっつけ本番になる要素もある。【侍ジャパン担当=広重竜太郎】