昨年のシーズンを最後に現役を引退した元阪神横田慎太郎氏(24)が大阪府内の病院を訪れ、サイン会などで入院患者らと交流した。

プロ4年目の17年2月のキャンプ中に脳腫瘍が判明。半年間の闘病生活を経て18年に育成契約を結び、リハビリを行いながら野球と向き合ってきた。ただ後遺症でボールが二重に見え、攻守に影響が出たことで引退を決断した。

この日は現役時代の背番号24のユニホームを身につけた、ファンには懐かしい姿で登場。球団関係者とともに鮮やかな黄色の「ウル虎の夏」の特製ユニホームを持参し、サインを書き込んだ。

現役時代の昨年も同じ病院を訪れており、引退後の今年も横田氏が希望して実現。「野球はやめましたけれど、こういう活動をすることでたくさんの苦しんでいる方の支えにもなると思うので、こういう活動は今後も継続していきたいという気持ちはあります」と明かした。サイン以外にも、ある女性患者の希望に答えて「絶対に病気を乗り越えられるので、頑張ってください」と声を吹き込んだ。「『ずっと後遺症があって苦しいです』と言われたので」と訴えた女性に、真摯(しんし)な思いを言葉で返した。

現在は鹿児島で1人で暮らし、次の人生を模索している。「こういうイベントとかファンミーティングもそうですけど、みなさん泣きながら帰って行かれる。感動をありがとう、とかもう1回目標を見つけさせてもらったとか。すごくうれしい言葉でしたし、そうやっていろんな方に自分の闘病生活から野球までの道のりを伝えられたらいいかなと思っています」と、病に苦しむ人々の助けになることを常に考えている。

横田氏にとって最終戦となった昨年9月26日の鳴尾浜でのウエスタンリーグ・ソフトバンク戦。不思議な力に押されるように前に出て、中堅から本塁へノーバウンドの送球。二塁走者を見事に刺した。福留、鳥谷ら1軍主力も駆けつけ、最後のビッグプレーを見届けた。横田氏の懸命さがチームを1つにし、連戦連勝でチームはAクラスをつかんだ。野球の力を見せた、最後の大仕事だった。

ユニホームに別れを告げても、他者を勇気づけられる存在であり続ける。