野村克也氏の訃報を受け、同氏がヤクルト監督時代にエースとして活躍した楽天の石井一久GM(46)が11日、都内で取材に応じた。

「今朝、球団から聞いた。僕がプロ野球選手になって一番お世話になった人で、野球の原点を教えていただいた。すごくショックです」と、神妙な面持ちで話した。

訃報を知ってから「自分は恩返しができただろうか」と振り返り、在りし日の恩師の姿に思いをはせた。思い出されたのは、ヤクルト入団2年目のシーズン。試合で打たれた後、監督室に呼び出され「お前、俺をなめているのか!」と目の前でイスを蹴り飛ばされた。普段は温厚で動きも静かな監督の強い言葉と鬼の形相は今でも忘れられない。「僕自身、本当に頑張らないといけないんだ、とあらためて感じさせられた。これからも一生忘れられないでしょう」と、振り返った。

現在の楽天GM職へ背中を押してくれたのも、野村氏だった。球場で会うたびに「お前もどこかのタイミングでユニホームを着ないといけないんだぞ。それが野球人への恩返しだ」と話してくれた。ヤクルト時代、何度も教わったデータ野球は、今でもしっかりと頭の中に記憶している。「野球を次の世代につなげていくことが、恩返しになると思います」と天国に向かった恩師に誓った。

突然の訃報に、慎重に言葉を選びながら話す石井氏の表情からは、まだ気持ちの整理がつかない。そんな複雑な気持ちが読み取れた。「監督も奥様が亡くなられてから、少し寂しそうでしたので。奥様のところにいけてよかったのかな、なんて…」。そう話すと、少しだけほおを緩ませた。

今季は野村氏の息子・克則氏も楽天で1軍コーチに就任。ともに優勝を目指しシーズンを戦う。「すごく大事なシーズンになる。見ていただければと思います」と気持ちを込めた。