日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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新型コロナウイルス感染拡大によって開幕が遅れているプロ野球界で、予断を許さないのが「日本野球機構(NPB)」と「日本プロ野球選手会」の労使間の行方だ。

緊急事態宣言の解除が実現すれば、開幕のXデー、試合数が固まってくる。そこで浮上するのが、シーズン短縮、試合数減になった場合に経営者と選手間で予想される待遇問題だ。

選手と球団は「統一契約書」によって契約を締結している。さしあたって参稼報酬(年俸)について指摘すると、この統一契約書には感染症など危機的事態が起きた場合の条文がない。

04年は球界再編を巡って労使交渉が決裂し、選手側が9月18、19日でストライキを起こした。セ・パ両リーグの全試合が中止になったが、この際は球団から年俸を減額できることを可能とした文言があった。

新型コロナウイルス感染のような不可抗力ともいえる不測の事態で、「野球協約」「統一契約書」に該当する条文が見当たらないのは、今後の1つの論点になってくるだろう。

全国的に外出自粛や休業要請の影響で企業倒産するケースがでてきた。一般社会では解雇される社員も多数でている状況で、個人事業主にあたるプロ野球選手も例外でない。

選手側は年俸の大幅削減、戦力外など、大きな傷を負いかねない不安を抱えている。一方、球団によっては収益の落ち込みが負担になってくる。双方の話し合いは一筋縄にはいかない。

本来、選手会と論議するのは、NPBの選手関係委員会になっている。しかし、ただでさえ今季から導入の方向だった「現役ドラフト」の話し合いも棚上げになっている状況だ。

仮に労使間の会談が実現し、議題が「統一契約書」の改訂に及ぶとすれば、年俸の減額制限、FA権取得条件の短縮など多岐にわたった問題で駆け引きが予想されるだけに容易ではない。

NPB、選手会のそれぞれが一体になれるか。新型コロナウイルス感染が終息に向かっても、プロ野球の舞台裏には根深い課題が横たわることになりそうだ。