広島菊池涼介内野手(30)が12日、マツダスタジアム隣接の屋内練習場で分離練習に参加した。プロ野球は前日の12球団会議で6月半ばから下旬の開幕を目指す方針を定め、来年開催予定だった第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の延期が決まった。先が見えない調整と、新型コロナウイルスとの闘いに、重い口を開いた。

   ◇   ◇   ◇

これまであまり多くを語らなかった菊池涼が、コロナ禍の心境を語った。6月半ばから下旬の開幕を目指す方針が決まり、WBC延期の報道があった。1勤1休の調整を続ける中、周辺が騒がしくなってきたが、主観だけでなく客観的に、多面的に情勢を見つめている。

「今はすべてに正しい答えなんてない。コメントも本当に難しい。いつ開幕するのかよりも、対策を主に考えていかないといけないと思う」

6月中の開幕を目指す方針も、移動方法や遠征先での予防策など解決しなければいけない問題は残る。「不安は僕だけでなく、選手はみんな感じていると思う。しっかりとした対策が必要。いかに賛同を得てできるか」。各球団だけでなく、世論も納得できる対策を提示してこそ、開幕への機運が高まると感じている。

高校総体に続き、全日本大学選手権も中止が決まった。コロナ禍の影響は野球界だけではない。だからこそ「プロ野球だけやっていいのか…」という思いもある。同時に「ファンを勇気づけられるなら」という思いもある。「僕らは言われた日程で合わせないといけない」。プロとしての覚悟を決め、長期化する調整期間にも目的意識を持って取り組んでいる。

今年は通算300犠打(残り22)、100本塁打(残り15)がかかかるシーズンだが、個人記録に興味を示せる状況ではない。来年予定していたWBCの23年以降の延期にも理解を示す。「(次回WBCの時は)どうなっているかわからないけど、元気にグラウンドに立っていたい。でもまだ先のこと。今、この状況を全力でみんなで乗り越えていかないと。僕らプロ野球選手だけじゃない」。菊池涼の視線は数年後のWBCでも、シーズン開幕でもなく、足元を見つめる。その先に、開幕とコロナ終息があると信じている。【前原淳】