阪神、日本ハム、メジャーでプレーし、14年ぶりの日本球界復帰に挑戦する新庄剛志氏(48)の引退後初連載「みなさん、夢はあるかい!?」はいかがでしたか。

バリ島の新庄氏にインタビューした寺尾編集委員が、22日までの5回連載で書ききれなかったこぼれ話や、阪神時代の思い出話もひもとき、秘話たっぷりの「取材後記」をお届けします。

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バリ島で暮らす新庄さんの単独インタビューは、合計7時間に及びました。2日がかりでしたが、まずは登場からぼうぜんとしました。

「ごぶさたです。よろしくお願いします」と切り出すと、新庄さんは言いました。「ちょっと待ってくださいね。今、メークしてるから」。

んっ、メーク? 化粧? いやいや、なにか勘違いを。これは日刊スポーツのインタビューですよ。それに、ぼくは“そっち”ではありません。

それが取材の幕開けでした。昨年公開された映画「新聞記者」(藤井道人監督)に「わたしは真実が知りたいんです」というシーンが出てきます。48歳シーズンを前に、現役復帰宣言した新庄さんの真意は? 今回の企画も、そんな素直な思いから生まれました。

幾度もサプライズを目の当たりにしてきたので、冗談とも受け取っていなかったのですが、長時間のインタビューからは、存分に本気度が伝わってきました。

阪神時代は敬遠球のサヨナラ打、FAでのメジャー移籍などなど、衝撃の連続でした。日本球界に復帰した04年は球界再編イヤーで、球宴ではまさかのホームスチールで「これからはパ・リーグです」と宣言。エンターテイナーとして、日本ハムの本拠地、札幌ドームを超満員にしました。

そういえば阪神時代、ファンだというから、歌手の福山雅治さんを紹介したことがありました。すぐに甲子園で打席に入る際の曲に「桜坂」が流れたので、ネット裏の記者席でひっくり返ったものです。

取材のなかで、これまで8回も交通事故にあったことが明かされます。小さい子どもを助けるために飛び出し、自分がトラックにひかれて荷台の下敷きになったといいます。

それでも生き延びたのは、強運の持ち主だからかも。美輪明宏さん、江原啓之さんの2人から「あなたの右手から金粉がでてる」と言われたそうです。

長い記者生活で、すごさが伝わってくる選手たちと向き合ってきました。でも新庄という選手は特異で、こちらが力ずくで取材をかけたくなる存在でした。紛れもなく“個”が輝くスター選手で、球史に残る1人でしょう。

インタビュー中、愛犬のおとぼけティクくんがネコを追い回すので、再三話が中断しました。かと思えば、突然「ちょっとインスタライブで腹筋、背筋やってきます」と中座し、なかなか帰ってきません。

そして1時間ほどして戻ってくると、再び熱く夢を語り続けました。「みんなを明るくしたい」「バカだといわれるの慣れてますから」って堂々と。アラフィフの挑戦。新庄さんは、やっぱり宇宙人でした。【寺尾博和編集委員】