オレもいるん弾! 阪神原口文仁捕手(28)が今季1号で正妻どりをアピールした。

ソフトバンク戦に「8番捕手」で先発し、2回に開幕投手内定の東浜から同点2ラン。二塁打2本も放って4打数3安打と大暴れだ。1年前に大腸がんから奇跡のカムバックを果たし、今月4日にはツイッターで思いをつづった。梅野隆太郎捕手らと争う開幕マスクへ、奇跡の男は諦めない。

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乾いた打球音が無観客の甲子園に響いた。原口は打った瞬間、確信した。「センターにいい風が吹いているのも分かっていたので入ってくれるかなと思いながら走っていました」。今季1号は外野陣も2歩ほどで追うのを諦めて見送る完璧な当たり。出迎えられたベンチでは、チーム内で流行? の「かめはめ波」ポーズを小さく決め、グッチスマイルを振りまいた。

好投手から価値ある1発だ。0-2の2回1死一塁。日本一軍団の開幕投手に内定している先発東浜を打ち砕いた。真ん中に入った初球138キロカットボールを振り抜き、左中間席に放り込んだ。「本当にいい感触でした」。本拠地甲子園では昨年7月13日、日をまたいで2打席連発となった球宴第2戦以来の1発となった。

奇跡のカムバックから約1年がたった。19年1月初旬に大腸がん宣告。手術後の懸命なリハビリを経て、約半年でグラウンドに舞い戻った。1軍復帰戦となった同6月4日ロッテとの交流戦(ZOZOマリン)では代打適時二塁打。ヘッドスライディングで土にまみれた背番号94は、大きな歓声を浴びた。あの日からちょうど1年後の今月4日に自身のツイッターを更新した。

「多くの方から『復帰して1年だね』と声をかけてもらいました。野球ができる喜びを日々感じて、楽しみます!」

思いを新たにした2日後、豪快なアーチを懸けた。激動だったこれまでの道程を「こうやってチーム全員で野球ができて、うれしい限りです」と振り返った。

昨季は打撃が買われ、一塁やDHでの出場も多かったが、今季は本職でのスタメン奪取に燃える。この日は先発岩貞から4投手をリードし、強力打線を2点に抑えた。打っては8回にも3打点目となる適時二塁打を放ち、猛打賞の活躍。矢野監督は「打撃が元々いいものを持っているのは分かっている。それプラス、今日は守りの方でもしっかりやってくれた。こちらもいろんな考えがまた、膨らむなという感じですね」と評価した。正捕手梅野や坂本ら強力なライバルもいるが「甲子園でホームランはすごく気持ちのいいこと。シーズンで打てるよう、練習からしっかりやってきたい」。奇跡の男が開幕マスクへ猛アピールを続ける。【奥田隼人】

<阪神原口のここまで>

◆がん宣告 19年1月8日に人間ドックを受診し、大腸がんと宣告される。

◆手術 同26日に入院し、腹腔(ふくくう)鏡手術を受ける。数日後に病理検査の結果が出て、ステージ3bであったことが判明。

◆抗がん剤治療 2月2日に退院し、同6日から7月9日まで抗がん剤治療。

◆2軍合流 3月7日、2軍に合流。

◆実戦復帰 5月8日ウエスタン・リーグ中日戦(鳴尾浜)の8回に代打で登場。207日ぶりに復帰。

◆1軍復帰即適時打 6月4日に1軍登録され、敵地ロッテ戦の9回、代打でタイムリー二塁打。

◆ただいま! 6月9日の日本ハム戦(甲子園)で同点の9回2死二、三塁に代打で登場し、中前にサヨナラ打。お立ち台で「ただいま!」と絶叫。

◆球宴2打席連続アーチ 7月12日の球宴第1戦(東京ドーム)で本塁打。同13日の第2戦(甲子園)は2回の第1打席で、2試合にまたがっての2打席連続本塁打を放った。

◆特別賞 11月のセ・パ理事会でリーグ特別賞受賞が決まった。「いろいろなことで苦しんでいる方々に勇気や希望を与えられるプレーができるように」と決意表明。

◆キャンプ参加 今年1月24日に、2年ぶりの1軍キャンプ参加が決定。