ソフトバンクが3か月遅れの開幕戦を劇的なサヨナラで飾った。1-1の延長10回2死三塁、工藤公康監督(57)が2番に抜てきした栗原陵矢捕手(23)が、中前打を放って激闘に終止符を打った。本職は捕手ながら打撃成長で一塁で開幕初スタメン。工藤監督の“秘蔵っ子”の起用が当たり、「ヒジタッチ」で喜びを分かち合った。工藤ホークスは2年連続開幕戦を延長サヨナラで制し、開幕は4年連続勝利。4年連続日本一へ「サイコー」なスタートを切った。

  ◇    ◇    ◇

打った瞬間、右手で拳を作り、一塁へ走りだした。延長10回2死三塁。ソフトバンク栗原が、中前へ歴史的な開幕戦で勝利をもたらすサヨナラ打。例年なら、一塁側ベンチから飛び出したナインにもみくちゃにされるはずだが、新型コロナウイルス感染の影響で今季はそれができない。ナインと「エアハイタッチ」「ヒジタッチ」で、おとなしめに喜びを分かち合った。

その中でマスク姿にも、目尻を下げていたのは工藤監督だった。自身、2年連続開幕戦サヨナラ勝利となった立役者と「ヒジタッチ」。過去3年日本一に輝いた時と同様、4年連続での開幕勝利だ。

工藤監督 今年は攻撃な野球をする。昨年までの課題は得点力。今年は最初からバントはせずに、どんどん攻撃して点を取る。つながり重視で一気に得点する打線をつくりたい。

今季の開幕戦からその思いを表現した。「2番一塁栗原」。捕手ながら昨年秋から打撃成長著しい栗原をこの日の朝、告げた。開幕初スタメンで緊張していたが「思い切ってやれ。責任をとるのはこっちだから」とほぐして送り出していた。

インタビュアーが隣にいない、一人きりのお立ち台に上がった栗原も「ホントはもっと喜びたいですが、ハイタッチらしきものができてよかった」と言葉を弾ませた。3打席目までは三振、三振、投ゴロと凡退。8回に上林に続いての連打となる左前安打を放って、自分を取り戻した。「柳田さんからリラックス、リラックスと言われたし、今宮さんからも振れと言われました」。みんなの思いが栗原のバットに乗り移った結果でもあった。

工藤監督 今年は新しい力も芽生えてきたということがファンにみてもらえたと思う。素晴らしいスタートがきれた。これからも心ひとつに、思いをひとつにしていきたい。

誰もが予想していなかった新型コロナの影響による3カ月の開幕延期。チーム全員でこの危機を乗り越えた。工藤監督は選手のコンディションを管理し、直接電話するなどこの日のための準備に全力を注いだ。栗原も3月オープン戦までの好調を落とさなかった。工藤監督と栗原の笑みが、苦しみを乗り越えたチームの心を代弁していた。【浦田由紀夫】

◆栗原陵矢(くりはら・りょうや)1996年(平8)7月4日生まれ、福井県出身。春江工では2年春にセンバツ出場。3年時は高校日本代表主将。14年ドラフト2位でソフトバンク入団。17年6月13日巨人戦で1軍デビュー。昨季は7月23日ロッテ戦で田中からプロ初本塁打を放ち、32試合で39打数9安打(打率2割3分1厘)、1本塁打、7打点。179センチ、75キロ。右投げ左打ち。