手を握る代わりに、すしを握ろう! ロッテのブランドン・レアード内野手(32)が1号ソロで、今季初勝利に導いた。

「先制打を打てて良かった」とダイヤモンドを1周すると「ウォッシュ、ウォッシュ」と聞こえてきた。

井口監督と鳥越ヘッドコーチの手洗い指示が、開店への合図だ。ベンチ全員が左手のひらに、右手指をポンポンと押す“すしポーズ”で主砲を出迎え、最後はやっぱり本家でなくっちゃ。魚を釣り、手を消毒し、さばいて、消毒し、握って、さあ出来上がり。お客様は売り出し中の俊足和田。“初来店”の若者が笑顔で食べ「幕張寿司2020」がオープンした。

新型コロナウイルスは、ロッテの伝統も奪った。毎年、開幕戦の試合前に選手、首脳陣、スタッフの全員がロッカーに集まる。輪になってミーティングをし、最後は監督が先頭になって歩き出す。全員が、全員と握手。室内あちこちに男たちの「よろしくお願いします!」が響き、熱気に満ちてシーズンが始まる。「あれこそが開幕戦」と胸を張るOBも多い。

20年以上続く熱い儀式さえ、今年は自粛するしかなかった。だからこそ、開幕3連戦のうちに幕張寿司でチームが1つになれた意味は大きい。投手陣が2戦4失点と粘る中で、4番の「これからもどんどんホームランを打って、たくさんすしを作りたい」と援護を誓う言葉は頼もしい。1勝1敗で3戦目へ。玄界灘にはまだまだ魚が泳いでいる。【金子真仁】