甲子園に「4番井上」が帰ってくる。阪神は23日のウエスタン・リーグ、オリックス戦で同リーグ開幕を迎える。舞台は甲子園。昨夏履正社で全国制覇したドラフト2位ルーキーの井上広大外野手(18)は、プロ初の公式戦で4番出場が濃厚だ。すでに練習試合などで6本塁打している未来の大砲を、日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(50)が「解体新書」で分析。1年目から長打を打てる秘訣(ひけつ)は、右足の使い方にあると期待を寄せた。

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14枚の写真の中で、真っ先に目に留まったのは<3>だ。これは最高の形だ。

ゆったりとした構えから、トップの位置を作っていくのだが、この1コマには、右足の内転筋にしっかりと力を蓄えられているのが見える。グリップの位置はしっかり固まり、左足は投手の方向に向かいつつある。上半身と下半身のねじれが生まれる、この形はいわゆる「割れ」ができているということ。これができないと、体が前に突っ込み、パワーも乗らない。打者はトップの位置をしっかりと固められるかで悩むものだが、この割れがあれば、安定する。後はバットをボールに向かって、最短距離で落とすだけ。この形をバッターは追い求めている。

<5>のようにバットを振りだしてから、右肩が下がっているが、これは低めの球なので問題はない。もう1点、彼の長所を感じるのが、<9>までの右足の動きだ。この軸足のかかとが浮き上がるのを、極力我慢している。右足の親指の内側で踏ん張ることができているため、<3>で蓄えた内転筋のパワーをロスすることなく、ボールに伝達できている。これが飛距離を生むコツだ。プロに入って、まだ間がないが、遠くに飛ばすスイングが出来上がっている。

<8>からのフォロースルーはかなり大きいが、これは軸足がしっかり使えて回転できているので、遠心力が働く。その証拠だ。彼のすべての特長は右足にある。いいものを持っている。

彼の打撃フォームを見て思うのは、木製バットに対応するのは早いし、本人も苦にしていないだろう、ということだ。木製バットのほうがバットのヘッドの重みを使えるので、楽なのではないか。現時点で、特に修正点はない。今の時期は、当てにいかずに、とにかく振り込むことが重要。壁にぶち当たれば、その時に考えればいい。入団前には「インサイドを打てないのでは?」という声も聞いたが、そんなふうには感じない。内角も打てるだろう。

守れるなら、1年目から試合に出しても、おもしろい。ある程度、打席に立てば、1軍で本塁打も打てるだろう。【取材・構成=田口真一郎】

○…桧山氏が自身のYouTube公式チャンネルでさまざまな取り組みを発信している。「桧山進次郎の何しよ?」のタイトルで、本職の野球や趣味などさまざまなジャンルに挑戦。「野球指導編」では、自ら手本を示しながら、野球少年に分かりやすく技術を教えている。「皆さんに楽しんでもらえるようなものを提供したい」と話した。