阪神青柳晃洋投手が安定感抜群のマウンドさばきで「連敗ストッパー」を演じきった。天敵封じが成長の証だ。4回2死。村上にシンカー、スライダーで小気味よく追い込み、最後は外角カットボールで空を切らせた。敵の4番を3球三振。昨季3被弾、打率4割1分7厘と打ち込まれた大砲を寄せつけないマウンドさばきだ。

「去年は、本当に村上にやられていることが多かった。抜けたカットボールがそのままいい球になった」

4回まではノーヒット。5回に初安打を許し、1死三塁のピンチでも冷静に後続を断った。7回先頭の青木に死球を与えて降板したがツーシーム、シンカーなどを自在に操り、77球の省エネ投球で1安打無失点。今季初勝利を引き寄せた。

「連敗中というのは少しは頭にありましたけど、そんなに意識することなく自分の投球をするだけ」

もはや神宮は“鬼門”ではない。昨季は3戦2敗で防御率4・50。5年目で神宮初勝利だ。1年前は悪夢を見た。昨年5月6日。先頭太田のセーフティーバントを一塁悪送球…。課題のフィールディングにミスが出て、初回2失点から崩れた。だが、黒星を前に進むための力に変えていた。

登板後のチャート表を手渡され、余白にメモが書かれていた。「苦手なことにも挑戦して、ずっと練習する、挑戦していくところがいいところ。失敗で落ち込むんじゃなくて、どう改善するか、どう取り組んでいくか。自分次第で何とでもなるぞ」。矢野監督が書き込んだメッセージだった。

ファームでくすぶっていた18年も、2軍監督だった指揮官に細かく投球を学んだ。1つ1つの言葉が後押しになった。「今日は何が良かった?」と問われて、思考を磨いた。「ヤギのスタイル、確立できたな!」と声を掛けられて、自信に変えた。肥やしになる日々がいまにつながっている。

開幕前、青柳は矢野監督に男の誓いを立てた。「13勝します!」。昨季、自己最多9勝を挙げたが、2桁勝利に届かなかった右腕の決意だ。今季初勝利を見届けた指揮官は言う。「初回の攻撃と青柳が素晴らしい投球をしてくれた」。荒削りだった姿は遠い過去だ。これから無数の白星を積み重ねていく。【酒井俊作】

▽阪神福原投手コーチ(青柳について)「去年から対左打者対策を課題に取り組んできた中で、今日はいろいろな球を投げたり、去年にない攻め方もできていた。完成度をもっと高めてほしい」

▼阪神青柳が今季初勝利。神宮では4戦目の登板で初めて勝った。昨季終了時点で、セ・リーグの本拠地球場別(マツダスタジアム除く)では神宮が防御率4・50と最も悪かった。プロ入り後登板がないマツダで勝てば、セの本拠地球場すべてで白星を挙げることになる。